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「…………との事です」
出来事を葵姫に話す吉野に葵姫は手に持っていた扇子<センス>を壁に投げ捨てた。
バシンと投げ捨てられた扇子は壁にぶつかりそのまま床に落下…その行動を見て吉野は深くため息を吐き、近くに居た側付きの女房の1人が落下した扇子を取りに行った。
「姫様、何かに当たるのはお辞め下さい。」
吉野は静かに言い放つのに対し、フンっとそっぽを向く葵姫。
「大体、姉妹揃ってって何よ!!お父様がそれ程欲深いとは…もう、呆れてものも言えないわ。」
「左大臣様には何かお考えがお有りなのかと…」
「有るわけ無いでしょ?どうせ私達娘は、お父様の出世の為の道具よ」
「姫様!!」
扇子を拾いに行った女房が扇子を葵姫に差し出すと葵姫はそれを受け取りパタパタと仰ぎ、吉野の張り上げた声などどこ吹く風のごとく受け流し、手をヒラヒラさせた。
その姫の態度に吉野はまた、深くため息を吐き、後ろに控えて居る女房達に退出を促して、また、前を向き直ればあの時、ずっと外を見ていた左大臣の姿に葵姫は似ていた…。
そのように見え、この親にしてこの子有りとはこの事だと吉野は思った。
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