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「なぁ、聞いてるか?」
友人の声にはっとして視線を改める。目の前には不機嫌そうな友人の顔。
「悪い。聞いてない」
「だーかーら!」
友人――野山 啓吾(ノヤマ ケイゴ)は耳元に近付いてくる。
正直とても五月蝿い。
「ゲームだよ。ゲーム」
「ゲーム?」
これ以上面倒くさい行動に出られる前に俺――二ノ宮 彰(ニノミヤ アキラ)は興味があるように装う。
パソコン大好き噂話し大好きの友人はまたどこかの電子世界から拾ってきた物語を嬉々として語り始める。
「剣や魔法を駆使して魔王を倒す本格派RPGらしい」
「普通じゃん」
「ところが!」
啓吾はさらに顔を接近させてくる。椅子に座っている俺からすれば退路はない。
「なんでもそのゲームで死んだら本当に死んじまうらしい」
「へぇ~、怖い怖い」
よくある話しといえばよくある話し。明らかに信じてない俺の反応に啓吾はさらに噛みついてくる。
「しかも、そのゲームはやりたい奴がやれるわけじゃなくてどこからか突然送られてくるんだってよ」
俺はしばらくじっと友人の瞳を見つめる。ゆっくりと鼻から酸素を取り込み、口から二酸化炭素を吐き出す。
そうして言ってやった。
「アホらしい」
鞄を掴んで教室を出て行く。
「ちょ、彰ちょっと待てよ!」
慌てて啓吾も鞄をひっつかみその後を追った。
――――――††
学校に行き、友人と他愛ない会話をして、つまらない教師の授業を半分に空を見上げる。
それが日常だった。
壊したいとは思わない。
極々平凡な当たり前な毎日。漫画みたいな波乱万丈など待ち構えていない。
それが普通で当たり前。
変わらないし、変える必要性も見当たらない日常。
そんな白黒な日常に色がつくのは、もう間もなくだった。
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