キスと距離

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  「……無理矢理、好きって言わせて、無理に時間作って貰って、……言い争う事は無かったけど、言い争ったとして、修復を試みて貰えたのかなぁ?」 「ちょっと待て。何のスイッチ入ったんだ?お前は」 確かに、そう言ったのは俺だけどな? それは、単に俺にとって「彼女」ってヤツは、その程度での認識しか無いだけの話で、別に万人がそう思ってる訳じゃないのは解ってるだろ?? 「いや、何か、さ。……緒方って、案外、シャッター開いてるじゃない?」 「……シャッター????」 食いモンの次は、何を何に例えてるんだ? 「ココロのシャッター?」 「あ?」 「最近まで話した事なかったし、そもそも話す用事もなかったから解んなかったけど、緒方って、シャッター開いてるのよね?出入り自由みたいな?」 何の話だよ。 出入り自由?? 「ちぃはさ、……あ、元彼ね?ちぃって」 「あぁ」 「で、ちぃは、半分閉まってたのよねー。ずっと。……半分って言うか、ちょっと開けてるようで、進入禁止だったのよ」 見えない何かを見て、無表情に言葉を続ける。 「2年半、一緒に居たのになぁ……」 ココロの、シャッター、ね? あるとしたら、俺も開けてる覚えは無いぞ?確実に。 「そいつの事は知らねぇから、解んねぇけど、……好きな女にカッコ悪い姿を見せたくない。ってのとは違うのか?」 「そういうのとも、違う。何だろうね?何か、何だろう?」 「や、俺に聞くなよ」 見上げてくる美羽を見下ろして、しばらく目が合ったまま。 「私、何を話してんだろね?」 「まったくだな」 言われたソレに同意すれば、少しだけ口角を上げて、そのまま肩口に額が押し付けられる。 「……美羽??」 黙り込んで、数秒。 よく解らないが、とりあえず、好きにさせとくか。 別に害を成す訳でも無い。 「…………緒方は、優しいね」 「あ?」 「言われない?」 「初めて言われたな」 顔を上げないまま、クスクスと笑うような声だけが耳をくすぐる。 「緒方の彼女は、きっと幸せになれるよ」 「一応、お前が、俺の彼女だけどな?」 「フェイクじゃなくて。緒方は好きな女を甘やかすタイプだと思うわ」 ……居た事もねぇし、この先、居る気もしないけどな。それ。  
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