キスと距離

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  ちゃんと向き合ってなければ、気づかない事だ。 自分の感情を押し付けるだけのオンナには、気づけない事だ。 「それだけ想われて、幸せじゃない男は居ないだろ」 まぁ、ちゃんと向き合わないで自分の感情を押し付けるオンナに限って、「私がこんなに想ってるのに」とか、勘違いするんだよな。 ちゃんと相手を想ってる人間は、それだけ想っていても、相手じゃなく自分に落ち度があったんじゃないかって、思うんだよなぁ。 不思議なもんで。 「どうした?」 不意に抱きつかれたから、また、その頭を撫でる。 「甘えてるの」 甘えてる???これが?? 首に巻きつく腕は、どちらかと言えば、軽い拘束に感じなくもないけどな。 「……へたくそ」 「何?」 「甘え方が、へただな。お前」 「知らないわよ。言っておくけど、私、これでもお姉ちゃんなんだから」 だろうな。 変わってるけど、人を甘やかしがちだ。コイツは。 シャッターが閉まってた。とは言うけど、コイツも、その元彼とやらに満足に甘えたりしてなかったんだろうな。きっと。 だから、か。 変に湧いた庇護欲は。 黙っていれば、小柄な身体に、ふわふわした髪、おとなしそうな美少女。 実際は、少し変わってはいるけど、甘え下手な戦うオンナ。って、とこか? 「ま、卒業までは甘えていいぞ?」 「……ん?これ、卒業まで続けるの??」 ばっと離れて、見上げてくる瞳が少しだけ潤んでいるのは、気付かなかった事にするか。 「そりゃそうだろ?すぐ別れたら、お前、また面倒な事になるかもしれないだろ」 「や、もう大丈夫じゃない?侑亮とは付き合ってない事が皆にも解って貰えた訳だし」 それは、どうだろう、な? えげつないオンナは、どこまでも救いようがないモンだ。 前にも、コイツが言っていたように、一つ綻びを見つければ必死にそこをどうにかしようとするのが、バカなオンナの特徴だ。 「じゃあ、言い方を変えるか?」 「はい??」 「お前を置いておくと、俺が楽だ」 「…………えっと?どの辺りに私、貢献してるの?それ」 それに、意外に本気で楽なんだよな、コイツ。 ちょっと変なだけで。  
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