一寸法師

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貧しいながらも、 お爺さんとお婆さんが買ってくれた 立派な着物と刀を身に付けて、 晴れて都にやって来た一寸。 しかし、あまりの人の多さに それはそれは驚きました。 「凄い人じゃ。 今日は祭りでもあるのかのう」 老夫婦に育てられた一寸は、 若干言葉使いが 年寄り臭い所はありますが、 決してイタい子ではありません。 「――もし、 お尋ねしたいのじゃが」 通りを行き交う人に 声をかけました。 「仕事を探しておるのじゃが、 どこか私を雇ってくれそうな 屋敷を知らぬだろうか?」 「まあまあ、可愛い女の子。 仕事を探してるのかい?」 「私は女でも子供でもない!」 誰に声をかけてもこの有り様で、 一向に相手にされません。 それでも諦めずに尋ね続ける一寸に、 漸く仕事の紹介をしてくれる男が 現れました。 「この先にある大きなお屋敷の若君なら 雇ってくれるんじゃないか? ――まぁ、ちょっと変わり者だけどな」 「――誠か! では早速尋ねてみようかの。 見ず知らずの御方、恩に着る」 そう言って丁寧に一礼すると、 一寸は屋敷を目指しました。 .
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