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神見直紀(こうみ なおき)のもとに、その配達物が届けられたのは、彼が二十五歳の時のことだった。
最初は、知人からの配達物かと思っていた。差出人名義が、そうなっていたのだから無理もない。だが、その配達物には違和感があった。外見はただの封筒のはずなのに、中に何かをたたえ、その重大さを背負っている気がした。
その予感は当たっていた。入っていた手紙には、次のようなことが書かれていた。
――私は奥原巧ではありません。表の差出人は、偽名です。
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