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巧は少しの間、何も喋らなかった。しばらくして、
「そうか……」
と、短く言ったきりだ。
「じゃあ、もう写真撮らなくて良いな?」俺は言った。
「…あぁ」
「あと二日ぐらいしたら、日本に帰るから」
「…なんか、来てすぐに帰るような感じだな」
「いいんだよ。早く帰りたいから」
「わかった…じゃあ、もう切るな」
「あぁ」
電話は切られた。
巧に酷いことを言ったのはわかっている。巧にだって苦悩があるのはわかっているはずだったのに。
でも、こんな風にふらふらと生きている自分を思うと、どうしようもなく空しく、寂しくなるのだ。
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