5045人が本棚に入れています
本棚に追加
/899ページ
相手は女性で見覚えがあった。
確かマクライス・メフィサと言っていたな。
以前は選発トーナメントで辛うじて勝利を納めたが、今となっては勝てる気がしない。
久しぶりの戦い振りを見て成長をしているのは経験上判るがーー
そんな彼女に礼をしたのは良いが何やら怪訝な表情で俺を睨んだままだ。
「あの……何か?」
「お前……昔私と戦ってた奴だよな……?」
若干ボーイッシュな印象の喋り方で尋ねてきた。
別人に思わせるくらいの手応えだったから確認をしているのだろう。
しっかりと覚えている俺は首を縦に振り、肯定をした。
するとーー
「がっかりだ……失望したよ。落ちこぼれにも程がある……一回勝ったからって舐めた真似するのは最低よ」
「なな……ッッ」
フン、とこれ以上は何も言う事はないばかりに踵を返して去っていく。
あまりにの捲し立てるような台詞に俺は地面に付きそうなくらい顎を落とし、固まる。
言いたい放題言われてしまい精神的なダメージの方が強かった。
やっぱり……
これはこれで辛いよ……
その場で泣き崩れたかったが三拍子教官に早く下がるよう促され、俺は四角形の簡易的な試合場から皆のいる元へと戻る。
「く……クロード君……」
震えた声で出迎えるように近付いてきたのは最終決戦を共に戦ったセラ・ゲルビンである。
彼女は俺が力を失った事情を知る一人であった。
そんな青髪の女性は何故か握りこぶしを作り、身体までわなわなと震えていた。
どうしたのだろうか?
妙に殺気までちらつかせていて恐怖すら感じた。
最初のコメントを投稿しよう!