無情の正義

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俺は全てを守ろうとした。 けど、それが無理なことだって理解してしまった。 軍や傭兵団では、どうしても後手に回る。組織の無意味さを知った。 なら、せめてこの両手が届く範囲の人達だけでも、目が届く範囲の人達だけでも助け、救おうと思った。 “全て”よりは小さな範囲で、それだけなら何とか出来ると思って、そのためならどんな過酷な訓練や修行だってした。 でも、現実というモノはそれだけで救えるような生半可なモノじゃなかった。 確かに俺は手に入れた力で目の前で苦しんでいる人達を助けた。 人間という生き物は自分と違った──特に自分より力に長けたモノを妬む。畏怖の対象と取る。 俺はその対象になった。 それでも俺は救い続けた。 自分の夢がすでに壊れていることにも気付かずに。
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