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「あなたの願いを叶えて差し上げましょう」
その大男は、僕がランプを擦った途端に現れて、いきなり恭しく会釈し、そう切り出した。
身長百九十は優に越えている。
アングロサクソン特有の、金髪碧眼に彫りの深い顔立ち。
明らかなコーカソイド。
しかしその口から流れ出る日本語は実に流暢で、ネイティブな発音と言っても差し支えない。
夕暮れ間近、河原の辺。
橋の欄干にチャリンコを傾けて置き、低い斜面を砂埃を上げながら降りて来た。
高校の帰り道。
友達のいない僕は一人で癒しを求めて河原までやって来たのに。
不法投棄されたテレビやら冷蔵庫やらその他諸々のゴミ群に失望感たっぷりだった僕は、奇跡的に綺麗なまま佇むランプを発見して手に取ってお約束とばかり、試しに擦ってみた。擦ってやった。
そしたらゴミ山の向こう側から現れて、開口一番訳の分からない台詞を発したから僕は目を丸くし口をあんぐり開けたままで、為す術もなく突っ立っていたらそれを満足そうに見遣り、大柄な白人は次の通り説明をした。
「お喜びの所大変申し訳ありません。私と致しましても実に心苦しい次第ではありますが人気プランに尽き、数に限りがあります。従いまして今回限定三つ、限定三つにてお願い申しあげます」
丁寧に頭を下げる。
「えっと、その、つまり」
「その通りであります!」
何が?
「今回あなたの願いを限定三つのみ叶える事が可能です。びっぐちゃんす到来! という事ですな」満面の笑みを浮かべる。
「あの、それって」
「但し! 願い事を叶える前に、幾つかの、使用上の注意事項があります」
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