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睡眠薬を飲み込んでも三時間しかねむれない、ぼやけた脳みそとからだ。
くらくてせまい六畳一間の深夜四時。
外を車が走ってる、隣の部屋の人がシャワーを使ってる、きみの寝息、が、聞こえる。
あたたかい。
暗がりにうっすら見える白いベッドと白い毛布は、海みたい、波みたい、涙みたい。
「しろ」
名前を呼んでみる。ちいさく。
しろ、は、ほんとの名前じゃない。と思う。
だけどそんなこと、大して重要じゃないの、よね。
しろはどんな名前だって、わたしにはしろでしかないのね。だから。
「……ねむれないの?」
起こしてしまったみたい。
ごめんね、しろ。だいじょうぶだよ。
の、キス。
口を開けば、しろにもわたしにも舌があって。それは同じようにあたたかくて、とろとろしている。
同じようになめあってみれば、同じように温度があがっていく。
とろとろ。ぴちゃり。
もし冬の海が、あたたかいのなら、きっとこんな感じ。
しろはあたたかい。いつでも。あついくらい、あたたかい。
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