別荘

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「克己君は僕と北海道の名産でも食べに行ってお土産を買いにいきませんか?」 暗い表情の渋谷に今度は高坂が言葉をかける。富良野には名産品や観光地が数多く在るとガイドブックで調べていたので、楽しみにしていた。 「高ちゃん…名産品を食べ尽くすわよっ!」 すると、渋谷は拳を握って立ち上がって叫んだ。 「まったく…騒いでる暇があったら荷物運べってんだ…」 機嫌の悪い晃司は、トランクから持ってきた荷物を取り出して別荘の入り口まで運んでいた。 鍵は渋谷が預かっている為に本人が来なければ開けられない。 「晃司…手伝おうか?」 そこに片手で杖をついた泉が雪の中近づいてきた。 下半身不随になり、膝まで回復した後に海外にも出掛けて様々な治療を行って片手で杖をついてだが歩ける程度までに至った。 「無理しなくてもいいよ…あとこれだけだから俺が運んどく、泉は渋谷から鍵貰ってきてくれる?…」 最後の荷物を持ってトランクを閉めた晃司は、泉に鍵を受け取って貰おうと頼んだ。 「分かった!」 別荘に向かう晃司と反対に歩いて行って高坂と騒いでいる渋谷の方に向かった。 泉と一緒に高坂と渋谷がきて扉の鍵を開けた。 足を踏み入れると白い壁紙が貼られた壁に二階に繋がる階段があり、キッチンとバスルームが一階に設置されていた。 掃除されている様子で埃っぽい感じがしなかった。 「それじゃ…晃司と拓ちゃんは一階の部屋を使って、俺と高ちゃんは二階を使うから…」 各階には複数の部屋あり、来客用として使っていた。 歩行可能までに回復した泉だが、上り下りをするの段差のある階段の使わない一階を使った方が無難だと思ったからだ。
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