第参章

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――そこは完全な闇に近い、少量の光が照らすだけの空間。そこでは二つの影が話し合っていた。 「あの小僧はどうだった?」 片方の男はまるで『くだらない』とでも言いたげな口調で話している。名前を口にしていなくとも誰の事を指しているのか相手には伝わっている様だ。 「ええ。あなた様の仰る通りでしたな……大した力もない『雑魚』――いえ『稚魚』とでも言いましょうか」 男の言葉に答えたのは、セラフが昼間に手紙を手渡した聖堂教会の神父をしていた老人。その老人が男の質問に答えた後、逆に男に訊ねる。 「あの少年――セラフといいましたかな?何かあるのですか?」 「あの女が解き放った『希望』はどれ程のものかと思ってな」 「は?」 神父の格好をした老人には男が呟いた言葉の意味が理解できなかった。自分が理解していない事を知っても男が説明しようとしないのを見ると男に教える気はないのだと理解する。 「それよりも。私は共にいた少女の事が気になりますな――少女の指には五つの魔装具が飾られておりました。あの歳でその全てを操れるのだとすれば――」
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