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「ねぇ、一体どうなってるの?」
鴨下夕紀は僕の同期だった。
つまり新入社員からすると、半ば以上お局状態の古株。
……不公平だよな。
もちろんそんな事絶対に口にはしないけど。
僕は最初の灰を真新しい、赤い吸殻収集缶に落としながら、ゆっくりと、慎重に言葉を発する。
「何が?」
聞き返してはみたが、本当は夕紀が何を知りたがっているのかはわかっている。
「ごまかさないでよ? 教えて?」
わかっているが、それも口にするつもりはなかった。
「だから何?」
4人も来ればすし詰めとなる狭い給湯室である。
この距離だと僕はどうしても夕紀を見下ろす事になり、大きく開いたブラウスと、首に巻かれたスカーフの間にチラチラと見え隠れしている、滑らかな肌の曲線が気になって仕方ない――。
「くーちゃんだってば!」
いきなりの先制攻撃を受けた。
……専守防衛なんて、ナンセンスだって、誰が言ってたんだっけ?
まったくその通りだとおもう。
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