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五丁目光佑さん [「いつか振り返ってもあのときの僕らは」へのレビュー]
2017/1/9
妄想作家にとって大切なのは、変身スキルである。中途半端な妄想は命取りだ。尻尾の生えた少女や、うさぎ耳を生やしたままの執事なら、街に出た途端に狩られてしまうだろう。変身は、完璧にしなければならない。
作者は中学生ではない。まして、男子でもないはずだ。なのに、ここにはまぎれもない、中学生男子がいる。そして、中学校の校舎がある。
ここまでやられたら、あとはもう作者の思うツボだ。読み手もその世界に迷い込まされて、いつの間にかクラスメイトAになっている。そして読み手は二つの世界を彷徨い歩く。物語の世界と、自分が学生だった頃と。
車の中で本作を読みながら、私も、画面を追う手の袖が、学生服になっている錯覚に何度も陥った。
何も怖くなかったはずなのに、いろんなことが怖かったあの頃。
あなたも、作者の魔術にはまって、甘酸っぱい時の旅行を楽しむといい。
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