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一思想伝

小説

短編シリーズ

一思想伝

ルリトラノオ

この世界に主人公は、ファンタジーなんて必要ない。たった一つの思想に縛られた物語。

完結

43ページ

更新:2013/07/14

説明

思い返せば妄想が好きな子どもだった。

妄想と聞いて勘違いしないで欲しいのは、別に雄蕊雌蕊云々に限った話ではないということだ。

私のいう妄想はもっと健全極まりないもの。恥ずかしいことに変わりはないけれど。誇って話せることではないけれど。それでも、誰でも”そんな時期”があったんじゃないかと思う。……まあ、それはエロい話でも言えることではあるが、そうじゃないのだ。

夜寝る前、布団に入ると必ずと言っていいほど妄想を繰り返し、ときには興奮して眠れないことがあった。夜寝る時間が楽しみになり、眠くなる前に布団に入った。眠くなってから布団に入るとダメなのだ。妄想が乗る前に寝てしまう。それはそれは勿体無い気がしてたまらない。だから、眠くなる前に寝支度を整えるのは小さいころの日課だった。

部屋を暗くし、けれどすべて消さず電灯の小さな明かりだけは残し、目を閉じた。

昨日終わったところから、妄想は再開される。

私が主人公になって敵を倒す妄想。それは主に悲劇が多かった。

私は何万人も殺した。友人であろうとそれが物語に必要であるならば殺したし、敵に殺させた。無残に、そして残酷に、いくらでも残忍に。

友人を殺された私は涙をながし、敵に向かってがむしゃらに攻撃をする。けれど敵は倒れない。逆に私をめっためたにするのだ。そこで私が死んでも構わない。結局は生き返るから。

負けるか死ぬかした私は新たな能力に目覚め、敵を葬り去る。一件落着かと思いきや、また新たな敵が現れ戦うことになる。基本的はその繰り返しだ。

妄想の中ので何回死に、いくつの能力を持っていたかなんてもう覚えてないが、今思い出すとそれはそれは大変な世界だっただろうなと思ってしまう。

いったい妄想の中では何人が死に、いくつの街が壊され復興にいくらかかったのだろう。

思考が成熟してくるとそればかりが気になってしかたがない。

そして一通り思考を巡らせると「この世界で主人公以外に生まれたら、悲惨だな」と感想。

主人公以外に生まれたら巻き込まれる。世界を救うとの大義名分を背負った主人公に殺される。

主人公がいるから救われる未来があるが、主人公がいたから生まれる悲劇もある。

前者と後者、どっちがどれだけ多いのだろうか。




***さん[リンク]に表紙を描いていただきました。
本当にありがとうございます。

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