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孤独な犬の遠吠えがきこえる

小説 ミステリー・推理

孤独な犬の遠吠えがきこえる

水無月志穂

(10)

田中彼方さん主催のイベント参加作品。

完結

23ページ

更新:2017/09/17

説明

仕事から帰宅すると、飼い犬が何者かによって殺されていた――

動物の死骸を愛し、孤独に恐怖する「僕」は、自らの手でその犯人をさばくことを決意する。

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作品レビュー

★シルバー★
★シルバー★さん
【作品】孤独な犬の遠吠えがきこえるについてのレビュー

ネタバレ

レビュー失礼します。


読ませていただいた時に感想として書きましたが、とにかく好みの作品でした。冒頭から引き込まれ、あっという間の読破。「この作品が好き!」と声を大きくして言えないほの暗さがありますが、その闇に惹かれる読者は決して少なくない…そんな魅力的な作品です。

この作品を読みながら私がしてしまうのは、どうしても主人公の思想理解です。彼は「動物の死骸を通して、遠ざかっていく過去をながめている」し、快楽殺人というよりは、そこに一種の哲学的な楽しみを見いだしています。

また、この主人公独自のキーワードとしては「悪意」でしょうか。悪意を持って殺せば悪となる。事実、自分の愛犬に向けられた「悪意」反応します(実際にはそこに悪意はないわけですが)。彼にとって動物殺しは悪意や殺意の結果ではなく、哲学的で、芸術的な行為です。

さて。そんな彼にとって自分の愛犬の死体は芸術性はないものだったのでしょうか?それが、この作品を読んでの私の一番の疑問でした。
自分が愛したものの死体は最も尊いのではないだろうか?そんな結論が、彼の思考トレスをしていくと導き出されるのです。
あるいは、読み方の軸を変えると解が見えるのかもしれません。彼の台詞
「あの犬は、僕の大切な家族だっ た。おまえにも家族がいるだろう。それを失う気 持ちを想像してみろ。」
彼にとって「失う悲しみ」は想像されてしかるべきで、殺される痛みや恐怖は見えません。彼にとって飼い犬は、家族がいるというだけで殺す対象にはならない。そこに、彼が犬を飼えるような家に独り暮らしをしている背景を見たり、彼の孤独や哀しみを感じることができます。

この作品、思考でない体感が描かれている部分は少ないのです。私が拾い出せたのは二ヶ所。(もっとあったらすみません)

「 ガ ラスの割れ続けるような蝉の音が響いてくる。こ めかみを伝ってきた汗が、顎の先からアスファル トに落下した。」
「ナイフを握った手の内側に、汗がにじんでい る。 どこかで犬の鳴く声が聞こえていた。」
この手法は面白いですね。場面の印象づけには最適です。

長々と失礼します。最後に。
この小さな犬殺し達の十年後の作品を読んでみたい…と、個人的な願望を述べて終わりとさせていただきます。



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2014/06/09 23:08
コメント(1)

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