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コウタ ト アール

小説 ミステリー

コウタ ト アール

コウタ ト アール

狼歩

(10)

突然現れた謎の男、それは胸を焦がし、会いたいと切望していたあの人だった。

完結

849ページ

更新:2018/05/04

説明

心の奥に小さな不満を持ち、それを押さえつけながら生きている耕太。彼が唯一現実を忘れられるのは小説を書いている時だった。そのサークルで知り合ったアール。会うことは叶わないと思いつつ、いつしか顔も知らない相手に耕太は思いを寄せていく。ところがある日、アールが耕太の前にやってきた。不思議な行動をとるアールに、耕太は戸惑いながらも意のままに操られていく。
アールは何者か。何が目的なのか。疑いながらも耕太はアールに抗えない。二人の行きつく先はどこなのか。二人は幸せになれるのか。

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作品レビュー

Kim
Kimさん
【作品】コウタ ト アールについてのレビュー

ネタバレ

また一つ、出会えて良かったと思う大切な作品が増えました。

愛やしあわせという形のないもの、そして『再生』が、緩やかに穏やかに描き出された物語だと思います。

一度壊れたものは、全くの元どおりに戻ることは難しい。
でも、形を変え進化したモノとして、存在し続けていくことは可能なのではないでしょうか。

はたまた、壊れたことに気付かない、見えなりフリをして、元のままだと満足することも出来るのでしょう…。

難しいことだと思いますが、そんなことをグルグルと考えずにはいられませんでした。


優しくどこか不思議で、ゆらゆらと幻想的。
なのに読み進めながら生じる、小さく針で刺し続けるような痛み。

それらがとても心地よく、序盤から物語の世界観にドップリとハマってしまいます。

北海道の壮大な森や、アールの容姿などのサラリと美しい描写。
そして、耕太の仕事や家族という日常生活のリアルさ。
その対比が、心地よい違和感やさらなる浮遊感を醸し出しているように感じます。


どこまでが現実なのだろう?
誰が実在する人物なのだろう?


耕太視点で描かれたこの物語に、序盤から抱き続ける疑問です。

でも、そんなことが気にならなくなるくらい、耕太とアール二人の世界にドキドキさせられてしまいます。
まるで、現実とは切り離された二人だけの空間での逢瀬、というか……。

全ての謎や違和感など忘れて、ずっとそこに浸っていたいと思ってしまうのです。


後半明かされていく、思いもよらなかった真実。
それは、かなりの衝撃と痛みを伴うものでした。
でも、だからこそ、物語には謎多く幻想的な世界が構築されていたのだと気づかされます。

そして、その中で生きざるを得なかった耕太。
耕太をそこから救い出そうと必死の真紀。
耕太が会いたいと焦がれていたアール。
この3人の『再生』に、胸が締め付けられる思いでした。


そんな中、最後の最後に仄めかされる、最大の謎。
正直、ゾクリと鳥肌が立つほど驚きました!

でも、私はアールも耕太も、そして真紀も大好きです。
なので、作者さまが一つのしあわせの形として提示した、このラストがストンと落ちて来ました。

皆んながしあわせと思うのなら、それが一番で。
きっとずっと、この3人はしあわせなまま繋がって行くのでしょう。


何度でも繰り返しページをめくりたくなる、素敵な作品をありがとうございます(*^^*)

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2017/10/28 20:39
コメント(3)
ありす/休
ありす/休さん
【作品】コウタ ト アールについてのレビュー

(応援)
なにを見つめるのか、どこに重きを置くのか。

思えば、この世の中で一番の謎があるとしたら、それは自分自身。
自分を知り尽くしてさえいれば、この湧き上がる感情の正体も、出どころも、対処法もわかるでしょうに。
それが出来ないから、私たちは様々な葛藤に悶え苦しんでしまう。満ち足りたものを求めつつも、それは何か、どこにあるのかと自問自答を繰り返し。

作品内に流れる空気はとても柔らかで、内容も日常のシーンが多く、一見するととてもほのぼの。軽やかに読み進められます。
しかし、です。そんな優しい手ほどきに招かれてページをめくれば、チクチクとした小さな棘が作中にまんべんなく散らされていて、気づいた時にはもうびっしりと、こちらの心に刺さっています。

ミステリカテゴリの作品なだけに、作中には事件や不可思議な要素が多分に含まれ、その最たるものとしてアールという人物が描かれていますが、この無数の棘はそればかりが原因ではないでしょう。和やかな日常の隙間を突いて、幾度となく繰り返されるテーマがある。

それが如実になってくるのは、物語の後半部分。ミステリたる要素が、次第にアールから離れて主人公に移ります。
読者が投影する、いわば作品の中の自分自身がいつの間にか一番謎多き人物にすり替わっている。これは衝撃でした。

さらにラストにおいて、作者は最大の謎を読者に置いてゆきます。

「さあ、君ならどうだろう? どんな答えを見出すだろう?」

愛すること、愛されること。
幸せの代名詞とも言えるこれも、果たしてどうなのか。
抱きしめて愛おしむことだけが愛なのか。
気持ちを注ぎ、相手には何も求めないことか。それともすべてを欲し、支配したがることか。
慈しむことひとつにかけても、どれだけの枝葉に分かれることでしょう。

なにを見つめるのか。どこに重きを置くのか。

最後の謎解きは読んだひとりひとりが自身の価値観で解いていくしかありません。

優しい作風でいながら読了後に重く残るものを落としていく、そんな作者さまの筆の特徴が今回も素晴らしく発揮されており、堪能させていただきました。

最後に、表紙絵という形でこの作品に関われたことに感謝いたします。
どうもありがとうございました。

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2017/06/15 20:18
コメント(9)
しま
しまさん
【作品】コウタ ト アールについてのレビュー

ネタバレ

幸せってなんだろう?
それが、『コウタ ト アール』を読んで、わたしがずっと考えていたことでした。

自分の時間や体を犠牲にしてでも、不満に目をつぶって、自分のやりたいこと、ほしいもの、欲求を押し殺してでも守りたいもの。
大切な家族の笑顔、笑い声、温もり、一緒に過ごす穏やかな時間。

それでも、心の中に積もり重なっていくわだかまり。

そんななか、もしもかけがえのない唯一無二の大切な宝物を失ってしまったら…?
ほんの少し想像しただけで、胸が張り裂けそうでした。
深い悲しみを乗り越えて、少しずつでも現実を受け入れ、前に進むことができて良かったです。

ミステリアスで魅力的なアールさんには何度もドキドキしちゃいました。
耕太さんと奥さんとのやりとりは、なんだかとてもリアルです。
病院、MRIなど細かい描写もリアリスティックで引き込まれます。
作者様の話の引っ張り方も超絶。何度焦らされたことか。(笑)
巧妙に気になるところで区切るものだから、早く続きが知りたくて読みたくて、更新されるのを楽しみにしていました。

完結おめでとうございます。
長期連載お疲れ様でした。
私のちょっと厳しい意地悪(?)な質問にも丁寧に答えてくださり、ありがとうございました。
(*´艸`*)納得できましたー。

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2017/02/21 12:34
コメント(3)

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