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こんな風にしか

小説 詩・童話・絵本

こんな風にしか

たつじ

過去の恋、現在の心情をイメージが浮かぶままに綴っていきます。

完結

300ページ

更新:2012/01/02

説明

「こんな風にしか」

暑い盛りだった
太陽は高く白く
見るからに
灼熱の容赦ない光
陽炎と逃げ水が溶け合いトグロを巻いた

乗合馬車で出会ったジブシー女は精一杯派手な装飾をして
やけに甲高い声で明るく振る舞って
会話が弾んだように見えた

女が喋り疲れて寝入った後で
朱色に染まってゆく砂漠の小波を見ながら
何故こんな派手で陽気な女が街を出て行くのかと
紫煙をくゆらせた

さり気なく寝顔を盗みみると

疲れていた

目の周りの化粧が
少し崩れていた
誰かの名を口にした

俺は見なかったことにした
そして夢の中にいる彼女に向かってせめてもの罪滅ぼしとして胸中を告白した

俺も同じさ
街から辺境へ
この乗合馬車に乗る客はみんなそうだよな

居られない理由と
行かなければならない理由があるから
旅人は街を出る

膝の上に座る黒い少女の頭を撫でながら
吸い殻を外に投げ捨てる

辺りはすっかり漆黒の海

少女よ
私にしか見えぬ
幻よ

私はようやく
一歩を踏み出した

明日になれば
まだ見ぬ新天地が広がるであろう

あるいはお前が膝にいるうちは一生旅続きかも知れぬ

だがそれが
俺なりの愛し方

お前を持って行く
こんな風にしか

愛せなくて

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