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次に読みたいファンタジーコンテスト「和風ファンタジー」
講評者の三村美衣氏からのコメント =====  和風をテーマにした今回、大半の作品は日本、もしくはもうひとつの日本を舞台にしていた。見知った世界や文化ながら、ほんの少し視点や意識を変えることで見える幻想的風景も和風ファンタジーならではの楽しみだろう。大賞に選んだ『倭流幻想奇譚 屍小町、まかりとおす』は、黒船来航の横浜から語り起こされるゾンビホラーだが、花魁の語りから始めることでエキゾチズムを演出。万華鏡を覗くような眩惑感が堪えられない。『左団扇奇譚』も、日本を思わせる異世界が舞台。昼でも仄暗い世界を行灯の光が照らし、どこか懐かしいような居心地の良さがある。どちらを大賞にするか迷った末に、『倭流幻想奇譚 屍小町、まかりとおす』の鮮烈さを選んだ。入賞の『コモリクの寄席』は落語ネタ。この作品も物語の冒頭。寄せの酩酊感と緊張感を見事に描いており、ここまでの内容で完成していると言ってもよい。  また、惜しくも入選には至らなかったが、佐伯みかん『彷遑い流星姫譚 ー蛇籠に微睡む巫は花霞に熔けゆくー』は20世紀初頭の隕石の飛来から分岐に入った歴史改変スチームパンクもので動きのあるビジュアルが楽しかった。他にも陰陽師の少年がかわいい渚乃雫『盈月(えいげつ)の約束ー魂に刻まれた記憶の物語ー』、江戸で斬り殺された女性の霊が現代の本郷で目覚める倉松辰里『あなやめでたし』なども面白く読ませていただいた。 ===== 受賞作品への選評や見どころを一部掲載! また、エブリスタのメディアmonokakiにて、講評者の三村美衣氏よる創作ハウツー「新しいファンタジーの教科書」を連載中です! 第4回「これだけ押さえればOK! 和風ファンタジー設定の肝」も、ぜひ読んでみてください。 ※選評は登録されたメールアドレスへ近日中にお送りします。 ※SNSアカウントで会員登録されている場合、エブリスタトップページ上部「現在、このアカウントは仮登録の状態です。本登録はこちら」より、メールアドレスの設定をお願い致します。

大賞

横浜で一番人気の花魁・朱音は暗闇で目覚めた。閉じ込められていた樽の蓋をこじ開け、外に這い出し、月明かりを頼りに池を覗き込めば死に装束を身に着けた姿が映った。そう、確かにわっちは殺められた、いえ、心中したのでありんす――。江戸を穢土と読み替え、黒船の襲来によって神の祝福を失い、さらにゾンビウィルスが撒き散らされて地獄と化した終末的幕末を描く。まだ冒頭のみだが、郭言葉混じりで語られる世界は万華鏡さながらに目眩を伴う怪しさ。大傑作になるやも、という期待をこめて大賞に!

準大賞

妖怪退治の看板を掲げる「左団扇」に持ち込まれる怪異事件を、妖刀遣いと術士の2人の青年が解決する連作長編。左団扇で楽して暮らしたいという店名にこめた願いも虚しく、危険と貧乏と過去の因縁に悩まされる対象的な2人の青年がかっこいい。昼でも仄暗い薄闇の世界を舞台にした、剣と魔法の和風ファンタジー。

入賞

駆け出しの三味線弾きのちさが迷いこんだのは、亡者に噺を聞かせる異界の寄席だった。集まった死者の魂魄に落語を聞かせ、あの世に送り出すまで元の世界には戻れないため、ちさは吉助師匠の落語の囃子方となる。最近では落語を題材とした作品も珍しくなくなったが、お囃子から落語を語る視点が新鮮で、緊張感のある高座の描写や薀蓄にも引き込まれる。

佳作

高校を卒業したものの就職が決まらず、31通もの不採用通知を受け取った景壱。ネットで見つけた即採用・高収入の求人に応募し面接を受けに行ってみると、まるで駄菓子屋のような店舗。一発採用が決まったのだが、なんとそこは、妖し相手に商売を営む店だった。勤めはじめた景壱は、ここで意外な才能を発揮することに……。高い共感能力を持つ優しい青年に妖したちが信頼を寄せ、彼もその信頼に応えようとする姿が清々しい。
平安末期。無法者に襲われて琵琶法師の師とはぐれて海に落ちたゆきは、不思議な館で目覚める。海鳴りの音が聞こえるその場所で、館の主である姫君の奏でる琴と、ゆきの琵琶の音が、浮かばれない死者の魂を慰める……。『平家物語』を下敷きに、『耳なし芳一』に通じる怪異譚であり、展開に目新しさはないが、独特の音の表現、海鳴り、香の匂いなど、和モノならではのイマジネーションを換気する描写がすばらしい。
三途の川の手前で、盥に色とりどりの目玉を浮かべて売る「目玉売り」。江戸で大火が出た日、死神が連れてきた少女・おろくの屈託のない様子に心を動かされた店主は、彼女の目玉を蛇神の赤い目玉に交換してやる。ところがおろくが三途の川までやってきたのは手違いであることが判明。おろくは赤い目のまま現世へと返されてしまい、それがやがて江戸の町を焼き尽くす大事件へとつながる。盥のなかで目玉がぴちゃぴちゃと跳ねるまるで縁日の金魚すくいのような情景が印象的。元死神の「目玉売り」と、居候の死神。人の生き死にに関わりながら三途の川岸で生きる2人の青春譚(になっていくのでしょうか)。今後の展開に期待。
ある夜、突然窓辺にあらわれた白いモフモフとした生き物から、「お月さまを助けて」と頼まれた瑠璃。いったい月で何が起きようとしているのか、なぜ自分なのか。親友のちぃちゃんと、亮くんの助けを借りて調べるうちに、瑠璃は月と富士山を巡る因縁の世界に足を踏み入れることになるのだった……。古事記と竹取物語を下敷きにしたジュヴナイル伝奇ノベル。

募集概要

ファンタジー書評家「三村美衣氏」&物書きのためのメディア「monokaki」とコラボしてお送りする 「次に読みたいファンタジーコンテスト」 面白いファンタジーとは何かを探求しつつ、新しいファンタジー作品をどんどん発掘していきます! 【募集テーマ】 第五回目のテーマは「和風ファンタジー」です。 ★祖母の遺品だった着物を着てみたら、大正時代にタイムスリップ!? ★妖と心を通わせる落ちこぼれ陰陽師の、ほっこり活躍劇! ★天照大神に天岩戸から出てきてもらうための宴会。その裏にあった神々のドラマとは? ★一族に受け継がれる刀を手に、怪異を祓う主人公。けれどその刀は、一族の呪いをも受け継いでいた。 「和風」の要素が入っていれば、どのような世界/時代設定のファンタジー小説でも応募可能です。 ページをめくる手が止まらなくなるような、ワクワクするファンタジー小説をお待ちしています。 また、あわせてエブリスタのメディアmonokakiにて、三村さんによる創作ハウツー「新しいファンタジーの教科書」を連載中! 第4回は「これだけ押さえればOK!和風ファンタジー設定の肝」です。 「時代設定時に押さえておきたいポイントは?」「和の魔法要素とは?」といった、具体的なお悩みに答えます。 めざせ、テンプレ脱出!ぜひこちらも参考にしてください。

講評者プロフィール

三村美衣 ファンタジー、SF、ライトノベルの書評家として、長年の経験を持ち、数々のファンタジー・SFの小説賞の審査員を歴任。 現在も、創元ファンタジイ新人賞の最終選考を務める。 第一線で活躍する中で、次世代のファンタジー作品の誕生を待ちわびている。 著書『ライトノベル☆めった斬り』(太田書房/共著)、『SFベスト201』(新書館/共著)など。 2018年10月より、monokakiにて、ファンタジー小説の具体的な書き方を指南する「新しいファンタジーの教科書」を連載。

スケジュール

・募集期間: 2019年1月15日(火)17:00:00 ~ 2019年3月17日(日)23: 59: 59 ・最終結果発表: 2019年5月中旬予定

大賞 1作品 ・賞金5万円 ・三村美衣氏からの選評 準大賞 1作品 ・賞金3万円 ・三村美衣氏からの選評 入賞 1作品 ・賞金2万円 ・三村美衣氏からの選評 佳作数作品 ・三村美衣氏からの選評 ※大賞、準大賞、入賞または佳作(以下、「受賞」という。)の作品はエブリスタ公式SNS等で配信、紹介等される可能性があります。

応募要項

・文字数は5,000文字以上 ・連載中の作品も応募OK! ・すでに完結している作品 並びにエブリスタ内の公式イベント及び他サービス等の投稿イベントで落選した作品を、募集内容に沿うように再構成してご応募いただくことも可能です。 ※非公開設定している作品は、選考対象外となります。

コンテストの注意事項(必読)