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プロローグ

「ここなら誰もこねぇよ?」


不適に笑みを浮かべると、憂の細い腕をつかんだ


かすかに震えている憂



でもそんなことはどうでもいいと思った。



震えるからだを引き寄せ

ぐっと強く抱きしめる

おれてしまいそうな身体

小さくて




小さくて。


腕の中で必死にもがく憂の小さな身体




そのまま衝動的に俺は憂の唇に唇を重ねた




その瞬間、憂の頬からは涙がポロポロとこぼれ落ちた



必死でもがけど、俺の腕の中からは逃れられない


「……めて……」

2

私の日常





「お前は今日から俺の奴隷」






.

4


私の日常


それは特別華やかなものではない


むしろその真逆。


目立つ事を嫌い、笑うことも好まない



それが私が自分自身で望んだこと。

5

まだ肌寒い季節

新しくクラスも変わり

相変わらず慣れない空気を感じながら


私は席についた。



田中憂

高校2年生

今までひっそりと地味に生きてきた

恋愛どころか男子と口すらまともに聞かない。


何を話して何のために笑うのかも意味がわからない

はなから話す気などないから、そんなことを気にすることもないのだけれど



むしろだれとも関わり合いたくない

6



学校指定の制服の着こなしは、明らかに周りから浮いていた


線の様に細い身体

身長が高いうえに、姿勢が悪く、

更にはボッサボサに広がる髪


視力が弱く今時見たことのない厚底メガネ



身にまとうのは、陰のオーラ


まるで魔界に広がる枯れ枝のような風貌



勉強が出来ない訳ではない

友達が欲しくない訳ではない


かといってそういった事には気力が持てない



けれど不思議な事に、私はイジメに合うことはなかった


それほどに気味が悪いのかもしれない

でもそれで良かった






今まで空気のように生きてきて




そしてそれは、これからも変わらなくていい






誰にも関わらず

誰も寄せ付けず

孤立していい


私は誰とも関わりあいたくない……



深い心の底にある、忘れられないあの過去が、私をそうさせた

7

そんな私に趣味なんてものはなく、ただ過ぎてゆく時間を無駄に消耗してゆくだけ



毎日地面ばかりを見て、


毎日いつもうつむいている


そのうち地面に融合しそうだ





だからもちろん



恋、なんてものとはもっと縁がなく。



いや。



異性と会話したことなど、父親以外にはない



世界が違う


そう思っていた

8



学校という集団生活の中で




他人と関わらずに生きることほどたやすいものはない


しがらみもなく


ヒトの顔色を疑うこともしなくてもいい


興味のない会話に愛想笑いをする必要もない



不必要に声を発する事もないので、声はしゃがれていて、



めっきりここ数年笑った記憶もない


でも。



それでいい



それが、望んだ事なのだから

9


そんな日常にわずかの異変が生まれた



それは偶然だった


下校のチャイムの鳴り響く放課後



クラスでは笑顔で楽しそうにはなしているクラスメイト達が響き渡り騒がしい


部活に行く子たちや、

放課後遊びにいく話をして盛り上がっている子たち


そんな空間から、


私はそっと空気の様に教室を出ていく。






ただ少しいつもと違うといえば、足取りが少しだけ軽い。


いつもよりも少し跳ねるかかと。

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