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課長の涙

~貴史~


しばらくして俺はオフィスに戻ってきた。

部屋の電気は消えていた。


「さすがに帰ったか……」


俺はオフィスに入り自分のデスクに深く腰掛けた。


そして窓の外を見る。
月明かりが部屋を照らしている。


「あの日もこんな夜だったな……」


俺はスーツのポケットから小さな箱を取り出し、それを月明かりに照らした。

2

~美由~



「だいぶ遅くなっちゃったな……」


会社を出た私は急いでいた。

今から合コンに行っても大丈夫なのだろうか?


そうだ!連絡しておかなくちゃ。


鞄の中を探る……。




あれ?あれ?携帯がない……。


「あ~~~~~っ!机に携帯忘れて来ちゃった!」


私は急いで会社へ戻って行った。


会社の中はさっきよりも暗く感じた。

私は急いで自分のオフィスへと向かった。


あれ?


さっき閉めたはずのドアがほんの少し開いていた。


誰かいるのかな?


私はそ~っとドアを開けた。


部屋の中は暗かったが月明かりが差し込んでいて中の様子ははっきりと見えた。



……奥田課長?

電気もつけないで何やってるのかしら?



私はしゃがみこみ音をたてないように近づいていった。


フフッ。驚かせてやろう。


私は声をかけようとしたが動きが止まってしまった。


……泣いてる?

3

~貴史~



俺は小さな箱を両手で持ち考え込むような形で昔の事を思い出していた。





~5年前~


俺は当時大学時代から付き合っている彼女がいた。


彼女はデザイナーで家具などの装飾品のデザインをしている。

俺の会社からも彼女に仕事を回したりもした。


付き合って6年。

お互いに仕事が忙しくなりなかなか会う機会がなく、すれ違いが続いていた。


そんなことから俺はそろそろ彼女にプロポーズをしようと思っていた。


やっと彼女と休みがあい、その日は部屋でゆっくりと過ごした。

久しぶりに触れる彼女の素肌に俺は自分の欲望を抑える事が出来なかった。

今までのうっぷんを晴らすように何度も何度も彼女を抱いた。

何度目の絶頂を迎えたのだろう。

それでもまだ足りない気がしたが、彼女がぐったりとしていたのでそろそろ解放してやろうと思い抱き合ったまま眠りについた。

4

どれぐらい眠っていたのだろうか

外はまだ暗い……。

俺の気配に彼女も起きたようだ。


彼女は俺の体に腕を巻き付け話し出した。


「ね~。貴史」

「なんだ?」


彼女は俺の腕の中でまどろんでいた。


「私達付き合ってもう6年になるのね」

「大学の時だから……。それぐらいか」

「貴史はいつも私のフォローしてくれてた」

「そうだっけか?」

「まだまだ駆け出しの私に仕事回してくれたりしたじゃない」

「それはお前の実力だろ!俺は関係ない」

「またそんな事言って……。貴史から離れられなくなるじゃない」

「別にいいじゃね~か。それで」


俺はこの時、彼女に大事な話をしようとしていた。

5

「なぁ~」

「私ね……。新しい仕事することになったの!」


俺が言いかけた時、彼女が遮るように言った。


「イタリアでデザインの仕事」

「イタリア?」


俺は上半身を起こし彼女を見た。

彼女も上半身を起こし話を続けた。


「やっと私の仕事が認められて……。5年は向こうで仕事するつもり」

「お前……。それって……」


俺は嫌な予感がした。


「やっと掴んだチャンスなの。だから……」

「そっか……。お前の夢だったもんな。海外で仕事をするのが」


大学時代から彼女が言っていた事だ。
将来はデザイナーになって海外で仕事がしたいって……。


「安心して……。待っててなんて言わないから」


俺は自分の予感が的中したことを悟った。


「それは……。別れるってことか?」

「5年は長いわよ。貴史にはこっちに大事な仕事がある……。私にも……。
シャワー借りるわね」


彼女はバスルームへと入っていった。

俺は久しぶりにタバコに火を付けると窓の外を見た。

月明かりがきれいな夜だった。

6

~美由~



「沙織……」



えっ?あの課長が泣いてる?


私は驚いた。


さ……り?……なんだろ?

私は切ない顔をした課長から目を離せなかった。


ガシャン!!



「誰かいるのか?」


しまった!!


私は机の上に置いてあったペン立てを無意識に落としてしまったらしい。


どっ……どうしよう……。


「誰だ?そこにいるのは!」


課長の声がどんどん大きくなってくる。

近づいてきてる~~。


「すいません……」


私は覚悟を決めて机の下から出た。

7

「松本……。お前帰ったんじゃないのか?」


奥田課長は驚いた顔をしている。


「一度帰ったんですけど……」


あれ?泣いてない?

私の見間違えだったのかな~。



「おい!」

「はっ……はいっ!」

「ここで何してる?」


奥田課長は近くの机に腰掛けて言った。


「携帯を忘れて取りに戻ってきたんです」

「お前覗きが趣味なのか?」


奥田課長はタバコに火を付けながらニヤリと笑った。


いつも私だけに見せるあの意地悪な笑い方。

8

「違います!……なんだか声かけづらくて……」

「で?携帯はあったのか?」


あっ!そうだった。


私は急いで自分の机に向かった。


ドン!


「痛っ!」


私は慌てていてしかも暗い中だったので思いっきりゴミ箱にぶつかってしまった。


「あ……ありました……。痛い……」

「フッ……アハハハ……。お前ホント面白い奴だな~」


奥田課長が思いっきり笑った。


「ちょっと笑いすぎですよ!人が痛がってるのに……」

「ホント飽きない奴だな」


奥田課長はタバコの火を消すと私の方に向かって歩いてきた。

9

「ほら行くぞ」

「えっ?」


突然奥田課長に腕を掴まれ驚く。



「帰るんだろ!」

「一緒にですか?」


まさかこんな展開になるなんて……。



「お前なんか変な想像してないか?」

「はぁ?してませんよ」


私はなぜか顔が赤くなってしまっていた。

暗い部屋でよかった~。


「もう遅い時間だし、お前も一応女だからな」


奥田課長がニヤリと笑う。


「どーゆう意味ですか?」

「そーゆう意味だよ。送ってく。さっさとしろ!」


私は渋々奥田課長の後についていった。

10