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わきまえ #2




はっ……!




一時間後!?


うっかり聞き流していたけれど、一時間後といえば、もうあと30分ほどしか私には時間がない


「……やばっ!」


テーブルの上の資料をまとめ、急いでバスルームに駆け込む


顔を洗い流し、鏡を見た








…………。





私は、一般人だ





勘違いしちゃいけない

のめり込んじゃいけない




そう、自分に話しかける






このトキメキは、恋じゃないんだ…

2

急降下



電話がなかなか繋がらなくて、私はSOUTHの宿泊するホテルの廻りをグルグルとしていた



どうしよう……



少し前に到着して、ウロウロとしていたけど、チラホラとファンらしき女の子やオバサンがいて、下手げに混ざると、
そのファン達に同化しそうで嫌だった




いや、だから、ファンみたいなモノなんですけど…



いつの間にかSOUTHと接する事で、自分はファンとは違う特別な人間だと、他人を見下すような感覚に陥っていた



そんな事は、SOUTHは望んじゃいないのに

4


そんな事を考えながら、余りしつこく電話を鳴らす事も出来ず、私はボーッとユンファからの折り返しを待っていた



春先だとはいえ、まだ夜風は冷たく、私は薄着で来てしまった事を後悔しながら、
相変わらず六本木の街を無駄にあてもなく徘徊していた



どこかカフェにでも入ろうかと、足を止めた瞬間




着メロの【trajectory】が流れ出した




急いで携帯を手にする



画面を確認し、ユンファの文字に、胸が踊る


「…もしもし?」


焦って声がふるえた



「…イクゥ?ゴメン、今もう少ししたら戻るから」

イクゥって、………もう、無理だな、これ……


少し笑いそうになったのを堪えて、私は


「…わかりました、待ってますから、大丈夫です」


そう事務的に返事をした


「……………」


黙り込むユンファに、


「………何か……?」



なんで?

5




「………いや、なんでも」



…………?なんでもなさそうだけど?




「…そうですか?じゃあ、後30分くらいしたら、伺いますね」



「……………そのくらいには、多分着いてる」



不機嫌そうにも聞こえたその返事に、


「わかりました」

私はそう返事をして電話を切った





何だか、違和感を感じた



まだ、数回しか会った事がないし、
違和感を感じるほど親しい訳でもない


でも、明らかにユンファの態度がひっかかる




何か、した?っけ…


何かするほど、絡みはないハズだけど…

6



私は首を傾げながらも
30分、という中途半端な時間をどうやって過ごそうかと、適当にブラブラと歩きながら考える



うー…ん…


お茶をするには、短すぎるしなぁ……



トボトボと歩いていると、目の前に本屋があった




スッと自然に足がその方向に向かう


漫画好きな私は、そのまままっしぐらに漫画コーナーに足を運んだ



最近バタバタしていて、新刊チェックを忘れていた、とウキウキで本を物色する

すっかり待ち時間も一瞬で過ぎ去り、



~♪~♪~♪


着メロが響いて、身体がビクッと震えた





やばっ


「…ヨボセヨ~」


ちょっと冗談まじりに出てみた







「………………遅い」

一段と不機嫌なユンファの声が響いた

7




………どうしてそんなに怒ってるんだ…



何なら待ちぼうけ喰らってたのは私の方なんだけど?



「…ごめんなさい」

すいません、というトコロを
ついうっかりごめんなさいと言ってしまった




「………今、ドコ?」

ユンファの怒りの篭った言葉に、
すっかりホテルから離れた場所にいた事に気付いた



「…ホテルから、ちょっと離れた本屋さんにいるんで、15分くらい、かかるかも…」


と、申し訳なく言った



「……………じゃあ、エレベーター前にいるから」


そう言うユンファに、



「あ、部屋までわかるから、大丈夫です」

そう返した



「迎えに行かないと、フロア入れないから」


冷たくピシャリと言われた



「…………ご、ごめんなさい…」


そっか、SPの人、いたもんな…


メンバーの泊まるフロアは、ファン達が入ってこないように、SPの人が見張りをしている



私は電話を切ったあと、駆け足でホテルに向かった

8




あんなに肌寒いと感じていたはずが、
小走りで息切れし、額にうっすらと汗が滲んで、暑くて仕方なかった


先ほどよりもファンと見られる女の子の数が増えていた


私はそれを横目にゆっくりとエレベーターへ向かって歩いた



チン


と、何とも言えない小さな音と共に
乗り込んだ高速エレベーターの扉が開いた




「…………ヒッ…」

思わず小さな声が漏れた



見たこともないくらいの形相で、ユンファが腕を組んで睨んで立っていたからだ



「……………遅い」






それ、さっきも聞きました…

9




怒り爆発、と言わんばかりに、ユンファの後ろ姿から怒りがにじみ溢れている



そんなに怒らんでもいいやん…


と、言ったら殺されそうだったので、黙ったまんま、今朝いた部屋にまた足を踏み入れる


昨日、今日の今日、で


三日連続ユンファに会っていた




今だに、まだ夢を見てるのでは?と、錯覚する





「あ、辻元さん~、いらっしゃい~」


いつもはうざったいくらいのソンミンの声が、何故か今は天使の囁きに聞こえた


「どうも…」

チラッとユンファを見てみたけれど、ムスッとしたまま、ソファにドスンと座り込んだ





…………………何故

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