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第十章 忌み子の姫 壱詞 #2

竜語魔術と気法の合わせ掛けの威力は絶大のようだ。

砕けた蜘蛛がダイヤモンドダストさながらに宙に舞い散る。

「……完全回復したのか!! メルテシオンの神降ろしの姫、人柱にするには惜しい才能だ」

クロックワードは驚愕の視線をパリキスに注ぐ。

白き銀嶺の存在など歯牙にも入れていないようだ。

「貴君は姫君の所まで下がれ、姫君の神聖魔法ならその程度の怪我など一瞬で治してくれる」

前に出る竜人の後で、ガルンは何とか立ち上がった。

「あの魔人共……妙な眼力を持っている。あれは一人で戦うのは無理だ」

ガルンは魔剣を足元に刺すと、無理矢理右腕で外れた左肩を嵌め込む。激痛が脳を焼くが、耐えられない痛みでは無い。

その様子を見ずに竜人は回りを気にしながら答える。

「あれは……“魔眼”だろう」

「魔眼?」

「イービル・アイ……邪眼の一種だな。それもあれはかなり高位の力だ。視界に入るだけで能力が発動する極めて危険なレベルだろう」

ガルンは魔剣を拾い上げると深呼吸をした。

二人の魔人は対角に位置したポジションを変えずにいる。

その双眸からは禍々しい黒い光が洩れ出していた。

「一体はパイロキネシス……ファイヤースターター(発火能力者)に見えるが……。あれは炎と言うレベルでは無いな。爆発……。大気の爆発に思える」

「視界に入ったら爆発……? 洒落にならないな。既に射程内じゃないのか?」

竜人の呟きにガルンは舌打ちした。

見ただけで対象を爆発させる。

能力としては破格の凶悪さと言えよう。

そして、もう一体。

こちらの能力は見た目では理解出来ない。

どちらも魔眼を持つ魔人だと言う事だけは事実である。

「気ばりんす二人とも。その二体はただの魔人ではありんせん」

透き通る声が耳に飛び込む。

魔眼の脅威に曝されても落ち着いていられるのは、姫の清浄なオーラのお陰のように思えてくる。

「あの二人……“千眼の魔神バロール・フェロス”の一部が封入されておる。破格の魔眼が憑いているのはその為じゃ」

「“千眼の魔神バロール・フェロス”……?」

パリキスの聞き慣れない言葉をガルンは反芻する。

その言葉に反応したのはガルンだけでは無かった。

《ほーう。我が崇拝する王の名に気付くとは。流石、神降ろしの姫君だな》

頭に響く、ドロっとした不快な声が全員に伝わる。

(何だこの声は?!)

ガルンは辺りを見回すが気配は無い。

2

背後に突然嫌な悪寒が走り、ガルンは振り向く。

振り向いた先には、姫の背後の影から何かが迫り出して来る所だった。

「なっ?! 姫さん!」

ガルンの叫びは遅すぎる。

影から這い出て来た“何か”の腕がパリキスを掴むと、一気に影に飲み込んだ。

「気をつけよ!ここは“千眼の魔神”を降臨させるための神殿と化して――」

パリキスの声だけが残滓のように残った。

シャドウ・サイド(影側)の来訪者は意図もたやすく二人から姫を奪取したのである。

唖然とするガルンと白き銀嶺を他所に、先程の声が響く。

《姫は返してもらった。貴様らはここで朽ちるがいい》

嘲笑う声がフロアーに響き渡った。

3