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プロローグ



「ホラ…もっと声出せよ」


「…くっ…」


「そんなキモチ良さそうなカオしてるくせに。
俺に喘がされるのは屈辱なんだ?」


必死に唇を噛みしめる私の中に埋められた指先が乱暴にかき混ぜる音だけが静かな部屋の中に響き続ける。


しなやかに弾かれる彼の指は、私の弱い場所をあっさりと捕えさらに屈折したもうひとつの指を増やした。


「ふっ…あっ…」


堪えきれずに漏らした声で、薄明りの中に彼の勝ち誇ったような笑いがこぼれる。


「オマエの親は自分の娘が俺みたいな男にシーツがぐしょぐしょになるまで乱されてるなんて思ってねーだろなぁ」


「…うっ…」


「オマエどんだけ淫乱なの?
大嫌いな男に掻きまわされてんのに、余裕でもう一本入っちゃうんだけど」


2



不敵に笑った彼は、その表情とは裏腹な優しいキスを乳房に落とすと桜色の頂きに生温かい舌を這わせた。


「ハシタナイ女」


言葉で蔑みながら執拗に舐められ、やがてはち切れそうなほどに膨らんだ円錐を彼はカチリと歯で噛み始める。


「うっ…やぁぁっ!」


上半身に走った泣き叫びそうなほどの痛みと、下半身に繰り返される狂いそうなほどの快楽が私の身体をふたつに切り裂いて行くようだ。


「もっと泣けよ。
オマエが泣けば泣くほどゾクゾクすんだよ」


そう言って彼は沈めていた指をまた一本増やした。


「あーあ…まだ入るの?」


全てを壊し合うような彼との戯れは、きっと永遠に終わらない。


それでも…これが私に出来る唯一の罪滅ぼし。


終わりなき憎しみ。


けれど…これもひとつの愛の形。


3


月に一度だけの狂気の交わり。


彼が私に与える屈辱は朝日が昇っても終わらない。


とめどなく溢れた甘蜜で濡らしたベッドが私の肌に冷たく感じ始めても、またうねくる蛸から新たに生温かい蜜を零してゆく。


「も…許しっ…」


「もう…何?」


「これだけじゃ…」


まるで私に罰を与えるかのように、いまだ指しかくれない彼に潤んだ瞳で懇願した。


「どんだけ好き者なの?」


口角を歪め呆れたような瞳で冷たく見下ろされても。


何度このしなやかな指で果てさせられても。


この薄汚い血が流れた身体は、やっぱり彼を欲して疼き狂う。


4



「ください…」


涙目で呟くとそれまで蔑んでいた瞳が微かに細められる。


この瞬間が私は一番幸せ。


決して優しさなんてくれない彼が…唯一私に見せる素顔である気がして。


「淫乱」


私の耳元で囁いた彼が押し開く。


恥ずかしさなんてどこかに置き去りにしてしまった身体は彼がくれるさらなる高みを今か今かと待ちわびるように再び雫を落とした。


「ご…めんなさい…」


うつろに謝罪する私を獣のような瞳がじっくりと見つめる。


5


その瞳に深く見つめられるだけで意識が高まる。


けれど彼は…どこか哀愁を帯びた瞳で零れ落ちる雫を指先ですくうと朱色の尖塔へと擦りつけた。


ゆるりゆるりと弧を描くように、けれど片手で私の脚を掴み更に押し広げる。


「まだ足りねーな」


「…っ…」


「もっと泣け。もっと叫べ。
オマエが壊れる姿を見るの、愉快でたまんないんだよね」


冷たく落とした言葉と共に、彼は熱い漲りを押し当てた。


その感触に息を飲みながら私は全身を硬直させる。


彼がくれる瞬間は…私への憎しみを一気に吐き出す時だ。


6



心を真っ二つに引き裂くように彼が一気に沈み込んで来る。


それだけで弓なりになった背中には、すぐさま彼の手が差し込まれた。


「あーあ…すっぽり飲みこんで…。
ホントにオマエって、やらしーな」


繰り返す旋律と共に落とされる屈辱の言葉と、背中に回された手の温かさ。


ねぇ…紺野君。


どっちが本当のあなたなの?


どこまでも意地悪な罰を与える彼は、高みに登り詰めそうになるとその旋律を止める。


「勝手にイクなよ」


ここまで焦らされ、もう私の身体は頂上へたどり着きたいと悲鳴をあげていても、決して彼はそれを許さなかった。


7


「ヨダレまで垂らして、ホントにオマエって最低だな」


繰り返される寸前の罰で締まりのなくなった唇からこぼれ出した恥汁を彼の舌がペロリと舐めた。


「…汚い…から…」


「ああ汚ねーな。ホントに汚くてゾッとするわ」


そう言いながらもくちゅりと絡められた舌を夢中で貪る私の姿は、どこまでも淫靡に違いない。


やがて彼が容赦なく私を壊し始める。


脳までが揺らされるほど、激しく打ち付けられた彼の腰で私の身体はガクガクと震えて弛緩した。


それと同時に身体の奥に熱い飛沫が弾けたのを確かに感じる。


幸福すぎるその感触を噛みしめながら私の瞼に浮かぶのは…。


ヒメムラサキの咲く丘で、触れるだけのキスをしたあの日の彼と私。


8



もうあの日の二人には二度と戻れない現実を悟らせるように、余韻もないままに彼は私から引き抜いた。


「ピル飲んでるにしても眠る前に洗っておけ」


起き上がりながら冷たく言葉を放った彼は私に毛布を被せるとバスルームに入って行った。


パタリと閉じられた扉を見つめながらとめどなく涙がこぼれ落ちる。


どうしてこんな風になってしまったんだろう。


この想いを伝えることなんてきっと許されない。


彼にとっての私は…壊したくてたまらない人形でしかないのだから。


それでも…彼がこうして私を抱いてくれるなら…。


私の中に全てを注ぎ込んでくれるなら。


私は地獄までだって堕ちてもかまわない───。


9

Act.1