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物語/冬の子/真面目

『生まれてくる前に、死にたかった』

名前も知らぬ少年が呟いた一言。それは、オルタンスが持ち帰った物語の一つ。
其処にイヴェールが生まれるに至る物語が在るとは到底思えぬ言葉であるし、勿論結果としては、やはり彼の物語では無かったのだが――しかし、その一言はふとイヴェールの心を引いた。

「……ねぇ、ヴィオ」
「何ですの?ムシュー」

小さく首を傾げて答える菫の姫君に、イヴェールは言葉を続ける。

「僕は、生まれると言う事は素晴らしい事で、生きると言う事は楽しいことだと思っているんだ」

「けれど、ヴィオ」と言葉を一度切り、そして問いを紡ぐ。

「生きるのは、辛いことなのかい?」
「……辛くはありますが、楽しい事も沢山在る、素敵な事ですわ」

彼の問いに一瞬複雑そうな表情を浮かべた後、すぐにヴィオレットは笑顔を作り答える。
その答えに、イヴェールは何処となく煮え切らない表情を浮かべ、曖昧な返事をすると今度はオルタンスの方を向く。

「ねぇ、オル」
「何ですか?ムシュー」

やはり小さく首を傾げて答える紫陽花の姫君に、イヴェールは再度問いを投げかける。

「生きるのは、楽しいことなのかい?」
「……楽しくはありますが、辛い事も沢山在る、哀しい事ですわ」

彼の問いに、片割れと同じ様な表情を浮かべた後、オルタンスは眉を下げたまま答える。
その答えに、再びイヴェールは煮え切らない表情を浮かべた。

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