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自販機の女

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自販機の女

 
 コンビニまでいくのも面倒で、自販機でジュースを買ったときのことだ。やっぱコンビニいきゃよかったかなあと内心思いつつ小銭を入れ、いまいちピンとこないままスプライトを選びボタンを押す。

 するとピロピロと軽い音をだしながら、通貨投入口の隣のルーレットが回る。当たれば同じのがもう一本というタイプの自販機だ。いつもならその結果を確認もせず、さっさと立ち去るのだがつい懐かしくてじっと見ていた。もしかしたら気だるい暑さにボーッとしていただけかもしれない。毎度のことだがハズレた。当たりの一歩先か手前で止まる。これもパターンだ。苦笑いして立ち去ろうとしたとき

「ピロピロリーン」

 という声とともに、女が自販機の陰から出てきた。呆気にとられていると

「お兄さん当たりだよ!当たり!!」

 女はやたらと大きな声でそういった。どう考えてもハズレだと思いながら、その女の声の大きさに不安になって辺りを見回す。

「ねえ聞いてるの!?」

 相変わらず大きな声でよろよろしながら女は近づいてくる。どうやら酒に酔っているらしい。やっぱりハズレだ。

「当たったんだから責任もって持ち帰りなさいよ」

 よくわからないが女は怒っているようだ。関わりたくないなと思って「ちゃんと家に帰れよ」と声をかけようとしたとき、女が大きくよろけた。崩れるような女を咄嗟に後ろから抱き抱えると、女の胸が手にしっかりのっていた。

「い、いや、ちょ」

「えっち」

 動揺しているうちに、女は顔を上げそういった。女は酔っているからなのか、そうでないのか顔を赤らめていた。そしてあろうことかその言葉と表情に、思わず唾を飲み込んでしまったのだ。電車が「プァァァァ!」とまるで勝負がついた合図かのように汽笛をあげ、通り過ぎていった。
 

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