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1章

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1章

層雲の彼方向こうで遊星はきらめき楽しそうに会話をしている、その声を聞こうと耳を澄ませばそのむこうの月でウサギがケンカをしているではないか。
慣れた手つきで餅をこねるベテランウサギの手を足がふらつき腕を持ち上げるのも辛そうな新米のウサギはキネを振り下ろすタイミングを誤って叩いてしまったようだ。
ひたすら腰を曲げ、頭を下げ謝る姿も餅つきの所作に似ていて私は思わず謝る新米ウサギに向かって「気にしなさんな」と声をかけた。
その声に驚き新米ウサギは驚いてこちらを振り返り、新米ウサギは私と目があった。 揺れる黒眼からは宝石のような涙が一粒零れた、するとベテランウサギは前掛けで手を拭い私に一礼すると新米ウサギに向かい怒りだした。


私はやれやれと立ち上がり杖を持ち毛足の長い絨毯に似た感触の白い何処までも続く綿毛のような白い雲から抜けて、同じくふわりとした感触の階段を執事のサタンと下がり始めた。
小屋にアダムがいるはずだ、昨日雨を降らせと言ったのにアダムは知恵の実に齧り付いて無心で番う行為をしていたので私は相手をしていたイヴと昨晩から隔離して監禁しているのだ。あれほど「食べてはならぬ」と忠告したにもかかわらずバクバク知恵の実を食べたアダムは、はたして小屋の隅で不貞腐れ体育座りをしていた。
声をかけるとアダムは今朝の朝食にも手をつけず温くなっているであろう水ばかりを啜っていた。
鼓膜が破れるほどの怒号がアダムの発する声だと気がついたとき、私はアダムの命を絶ち切ろうかと思案し執事のサタンに耳打ちをした。
サタンが小さい目でにらみ「黙れ、アダム」と言うとさらに凶暴にアダムは鉄格子に体当たりし暴れ始めた。

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