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最終電車

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最終電車

その連絡が駅に届いたのは、今日の運行電車も後一本と云う深夜だった。

「おい、新入り。最終電車が人を跳ねた」

「えっ!!…」

絶句する新人。

「飛び込みらしい。この駅の少し手前で止まっちまったってよ」

「で、せ、先輩。僕達はどうすれば良いのでありますか?」

こいつ…目に見えて狼狽えてやがる。

「この仕事に着く前に頭に叩き込まれなかったのか?」

「その…ある程度は…」

「まぁ良い。道々教えてやる」

俺達は線路脇に降りて、現場に向かい歩き出した。

「お前、マグロ拾いって知っているか?」

「はぁ、都市伝説ですよね?」

「そうだ。で内容は?」

「その…電車に跳ねられたバラバラになった死体を片付ける高額のアルバイトだと…」

「そうだ。しかしな、実際はいつ起こるか分からない自殺やら事故の死体片付けなんてバイトを毎日待たせておくなんて馬鹿な話しが在ると思うか?」

「あっ…言われてみれば確かに」

「そうなんだよ。事故処理として警察もある程度は片付けてくれるがな、細かく飛び散った死体を片付けるのは、俺達の仕事なんだよ」

新人は言葉も無い。暗くて見えないが、奴の顔は蒼白だろう。

俺自身も昔はそうだったのだから。

しかし、自殺や事故を気にしてはいられなくなった。
それだけ、この路線での自殺、事故は多かった。
もうそれは何かに憑かれているかの様に人が死んでいくのだ。

最初の内は俺もこの新人と同じで跳ねられ、飛び散った死体の片付けに恐怖を覚え、死者に対する弔意の念もあった。
しかし、長年の勤務に渡ってそれが続き、自殺の名所等と騒がれる内にそれも薄れ、いつしか俺の中で死体はマグロとなっていた。

遠くに微かに光が見えた。

「おい、気を付けろ。跳ねた最終電車が通るぞ」

事故とは云え最終電車だ。乗客の事を考えるといつまでも電車を停めておくことは出来ない。
線路の脇に避け進む。
電車が勢いよく通過して行った。
今の電車に死体の一部が絡まってる場合もある。

途中の線路脇に在るプレハブ倉庫から、トング(ゴミを拾うハサミ)とバケツを取り進む。

「新人、あれを見ろ」

ライトを向けたその先に小さな肉片が転がっていた。

「取り敢えず、お前が拾ってみろ」

硬直している新人。

「ビビってないで早くやれ」

ギクシャクと動き、トングで肉片を挟みバケツに入れる瞬間、新人はバケツに吐いた。

「あぁ仕方ねえなぁ。お前がバケツにもどしてどうする」

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