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《教室の二人》

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《教室の二人》

朝の教室。
「よしっ、今日も一番乗りっ」
机とイスが雑然と並んでいる。
その窓際の机に腰掛け、窓の外を眺める。
春のそよ風が心地いい。
校庭には、部活の朝練らしい生徒の姿がちらほら見える。
と、教室の扉が開く音がした。
「おはよう、今日も早いんだね」
教室に入ると同時に、そう声をかけられ、
「おはよう、委員長。毎日の習慣だからね」
と、振り向きながら答えた。

新学期。
ホームルームのクラス委員決めは、当然のごとく難航していた。
「誰か立候補はいないか。推薦でもいいぞ」
先生の声が教室に何度となくこだました。
「はい、先生」
ひとりの生徒の手がまっすぐ伸びた。
「おっ、立候補してくれるのか?」
「はい、やります」
おおっ、と教室内がざわめき、パラパラと拍手が起こった。

朝の教室には、いつもの穏やかな空気が流れていた。
委員長と二人で、ずれた机の位置を並べていく。
これもいつもの、二人の習慣だ。
「あの時委員長が手を挙げなかったら、今頃どうなってたんだろうね」
作業の手は休めず、聞いてみる。
「さぁ。でもまさかもう一人立候補してくるなんて思わなかったよ」
委員長は軽くため息をつきながら、笑って、
「委員長補佐だっけ? そんなの初めて聞いた」
「何か人の手が挙がってるのを見て、つられてというか衝動的というか…迷惑、だった?」
少し困った口調で、あとは言葉を濁してしまった。

一目惚れ、というのはこういうことを言うのか。
それも手を挙げた後ろ姿。
まさに衝動的な行動。
つられて立候補したなんて、何だか腑甲斐ない。

整然と並んだ机たちを二人で眺め、少し満足気な顔をした。
もうじき他の生徒も、この教室にやってくるだろう。
「じゃあ、職員室行ってくるね」
委員長は必ず、先生と今日の朝のホームルームの打ち合せをする。
それも毎日の習慣だ。

「あのね。本当は、一緒にクラス委員になれて、ちょっと嬉しかったんだ」
委員長は顔だけ振り返って、そう言い残すと、教室の扉を開け、小走りでかけていった。

教室には相変わらず、穏やかな空気が流れていた。


            〈終〉


このお話はフィクションです。
最後まで読んでくれてありがとうございます。

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