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実験概要

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実験概要

 煮詰まった陽射しが汚れに乱反射して、きれい。すこぶるきれい。

 掃除の手が抜かれている。もしくは、掃除されてないのかもしれない。雨と埃を繰り返しひっかぶって、重なり合って、鱗みたいだ 。

 他の教室に比べて圧倒的に汚れた窓ガラスが、情熱の色に染まった光にやすりをかける。

 ギラギラにフワフワを足して、濁点を引き、2で割る。キフラワ。すごい、1ミリも表現できてない。

「じゃあ、まずはこれ。んー、『名前で呼ぶ』か……」

 放課後、生物準備室、先生と私きり。

 瓶の底に浮遊物が落ちていく、みたいな心許ない沈黙は、私が頑として先生から顔をそむけているせい。

 頬杖の手首にまんま頭の重量を感じる。だるい。めんどい。馬鹿馬鹿しい。

「はーあ」

 これみよがしについてやったため息は、さらなる沈殿物として足元に降り積もる。

「近藤さん」しっとりとした大人の男の声色で、「こっち向いてください」

 変声期を終えたばかりの、未完成なけばだった声に囲まれている女子高生にしたら、たいそう魅力的な心地よさである。

 この男、声はやたらいいのだ。

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