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第一章:無作為

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第一章:無作為

 お父さんが四人の大人をうちに招いた。
 にこにこと笑顔の絶えない美男美女の夫婦と、無表情で元気のない夫婦の二組だ。
 みんなが何をやっているのか子供のぼくにはまったく想像できないけど、そこではきっと大人による大人の為の遊びが行われているに違いない!
 突撃しようとしたところをお母さんに止められる。「君にはまだ早い」って、小さく笑いながら。
 むむ、今のぼくにはアダルチィーな雰囲気が足りないのか! なんて、適当に参加拒否された理由を決めつけながら、ぼくは部屋に戻った。



 みんなが何をやっていたのか。
 それを病院のベットの上で知ったぼくは、その意味を理解できないまま、醜悪で醜いモノを真っ白なシーツの上に吐き出した。

 1


 少し外れているような気もしたけど、それがストライクかボールか見分けがつかないのでとりあえずバットを振ってみた。
 バッドが空を切る音や芯を食った快音が河川敷に響くことはなく、鈍い音と共にボールは投手のグラブに吸い込まれる。

 出塁という打者の仕事をバットと一緒に投げ捨て、てってってー、と緩い走りで一塁を目指した。当然、アウト。これで三打席連続の凡退だ。僕は一塁を目指していた時と同じペースで、ベンチに引き揚げていく。

 まあ、こんなものか。
 草野球を始めてまだ二カ月。経験者の球を簡単に打てるほど、野球道は甘くないということだ。

 福岡県の片隅にある田舎町の、さらに片隅に位置する河川敷。ここでは最近、地元の高校生による草野球が密かなブームとなっていた。
 娯楽施設の存在しない田舎町で青春を謳歌したいなら、一緒に野球やろうぜ! とは誰も言っていないけど、日常に蔓延る退屈を相手にするには丁度いいものだったのかもしれない。

 雲に覆われた空を見上げながらベンチに戻り、誰からもねぎらいの言葉をかけられることなく腰を下ろす。

 僕を打ち取った投手は「ツーアウトー」と、守備陣に大きくも小さくもない声を飛ばしていた。

「えっと、惜しかったな」

 隣に座っていた野々村(ののむら)が話しかけてきた。

「ピッチャーゴロだけどね」

「あー、野球の基本はセンター返しだと誰かが言ってたし、やっぱり惜しかったんじゃないか?」

「そうかな」

「そもそも、当てれるだけ大したもんだって」

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