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大和の章

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大和の章



「このいやらしい格好のまま、アマデウスを朗読いたしましょうか?」


挑発的に大股を開き、膝から下を窓に乗せ、メイドの女はそう言った。


視界を少し下げれば、スカートのなかが見える。


「どけろ」


車に乗った男は、目の前に置かれた霜降りの足に目もくれず、メイドの黒い顔面を睨み付けた。


2人が出会ったのは、ほんの数分前。


その屋敷、八角につき、これ奇妙。


見える海はオレンジの果汁色に染まり、空の雲は段々と色を変えている。


背後の山は雪が降ればウィンタースポーツも楽しめる格好の立地だが、今は冬が過ぎたために鮮やかな迎春花の頬を夕焼けが染めていた。


春の海と山の間。


朝と夜の束の間。


その丘の上には広大な土地が広がり、敷地内には林や放牧場、そして薔薇の迷宮が存在している。


その中央にはドーム球場よりも巨大な、暖光に包まれた八角形の大邸宅がそびえ立っていた。


その部屋数は100。


邸宅の遥か手前には、長門(ながと)と書かれた表札と長い門がある。


門は果てしなく横へ広がり、大邸宅の敷地を守っていた。


昨晩、屋敷では1つの事件が起きていたが、ひと晩明けた今は穏やかな夕暮れの時が流れている。


夕日を反射させ、セダン車が近づいて来た。

 

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作品に関する書籍情報

奇少物件100LDK

出版社:ティー・オーエンタテインメント

発売日:2013/8/1

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