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自分が私に殺されるのを見た。恐怖のあまり私はその場から逃げ出した。

 
 
【機械時計】


 時計――世界を刻み、その断片を測る機器。

【Vkt】はそれを知っている。だが、そればかりではない。その他のもの、例えば太陽。水。法律。薔薇。管弦楽。塔。舞踏会。砂塵。悲哀。庭園。海。雨傘。馬車。映画。宇宙。その全てを識っている。それらの事物を視たことはないがその存在を確かに識っている。これはVkt自身の内部に存在する観念界のはたらきであろう。根源は観念界に秘められている。神も宇宙も時間も総て私の中の観念界に散在する幻想の欠片。Vktはそう思っている。
 
 Vktはなぜ自分が此処にいるのか憶えていない。自分が何者かも憶えていない――何故、自分が自分であるのかも。だが識っている。あらゆる根源は私の観念界に刻まれており、憶えてはいないけれど、全て識っている。私は宇宙と同一で、神は私で、前世そして前々世、連綿と連なる記憶の集約が世界の真理を示している。それを識っている。私は私ではないのだ。Vktは夢見るように右手を翳して言う。


 ――甦れ。

(YomigaeLe)
 
 

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