/ 78ページ

序・フラグはここに成立した

(1/4ページ)

序・フラグはここに成立した

まぁ、仕方ないよな。ああいうときはさ……はぁ。







「貴様は──なんなんだ」

ぎりぎりで、間に合った。
黒衣の騎士の剣は、彼の獲物に届く寸前でしっかり固定されて、もはや1ミリも動く気配がない。

動かせないのだ。彼自身にも。

騎士の秀麗な面差しに浮かぶ感情が、驚愕から戸惑い、そして苛立ちへと変わるのが手に取るようにわかった。

「ここまでに、してくれないか」

だから俺はあくまで冷静を装って、声を作る。内心を彼に悟らせるわけにはいかない、気づかれるわけにはいかない。
得体の知れない闖入者(俺のことだ)によって必殺の一撃を止められた彼の驚きを、最大限利用するために。
背後に庇ったこいつを逃がしきるために。
無謀だとわかっている。
眼前の存在が、何者かを俺はもう理解している。
対峙する愚かさも。
目の前にいるのは当代一の実力者と、誉も高き青の総帥。
俺が背後に庇うのは、数日前に知り合ったただの知人のひとりに過ぎない。
それでも──身体は、動いてしまったあとだった。
こころが、見捨てるなと俺に言うのだ。
ちくしょう。
いまさら、あとなんかに引けるか。

「引いてくれ。……頼む。こいつはまだ、なにも知らないんだ」

まっすぐ、彼を見つめる。

すっぽり顔の半分を覆う無骨なゴーグルごしの視線など、彼に届くことなどはないとわかってはいたけれど。

ただ俺の懇願に、彼の口元が吊り上がる。炯々と戦意に燃える眼差しが、あれは自分の獲物だと言外に強く主張していた。
やっぱ、逆効果だったか。
ここで引いてくれたら、と一縷の望みをかけてたんだがなぁ。くそ。
馬に蹴られて死んじまえ、とよく知る声が脳内で再生された。黙れ腐男子。王道展開なんざくそくらえ。

ここで引いてくれよ、頼むから。

「……嫌だと言ったら?」

ああ、やっぱりそう言いますよねわかってた!野暮で済まんね、でも引けねぇわ。
内心の声が聞こえたわけでもあるまいに、黒衣の騎士の形のいい眉がぴくりと跳ねた。
強い敵意が、いまは俺に向かっている。びりびりと、肌で感じ取れそうなほどの強さで。

「──貴様が、引け」

ごめん、それ無理。なんつって☆

/ 78ページ

序・フラグはここに成立した

(2/4ページ)

みんなが送ったスター数

14

この作品にスターを送ろう!

明日のスターも待ってます!
(1作品につき1日1回 押せます)

新着ピックアップ

急上昇ランキング|BL