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十五夜の夜に。

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十五夜の夜に。

戸が開け放たれた縁側に、彼は座っていた。
歳は20代前半、短く刈り込まれた頭で、皺だらけの白いYシャツを着ている、下は同じようにヨレヨレの茶色のスラックスという出で立ちであった。

その縁側には小さな台が置いてあり、上には里芋や枝豆、栗に団子などがお皿と共に置いてある他に、真っ白な30cm程の花瓶があり、そこにはススキが刺さって夜風にゆっくりとなびいてた。

彼はその台の横で背後の床に突っ張るように両手をつき、片膝を立てた姿勢で夜空を眺めていた。

左上側に向けられた視線の先には、見事な円を描いた月が光り輝いている。

室内の電気は消されていたので、彼は月光を浴びながらずっと月を見ていた。

「まさに、中秋の名月。見事な月ですね」

背後の暗闇の部屋から、突然声が聞こえてきた。

その部屋の畳を踏む小さな足音が彼に近づいて来ると、声の主は月の明かりに照らされた。
歳は40代後半で癖のある髪を掻き上げている。服は作務衣を着ていた。その男は彼の背後に立ち、月を視線に捉えたまま続けた。

「私も何十回と十五夜を経験しましたが、こんなに美しく見事な月は見たことが無いですね。奇跡ですね」

「……そうかもしれないね」
縁側に座る若い男は、全く視線を変えずに呟く様に答えた。

「奇跡といえば……あの右側の山の上を見てください」

と、作務衣の男は月とは反対側の方向を指差した。その言葉につられて若い男の視線がそちらに動いた。

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