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老婆の願い

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老婆の願い

 老婆が砂浜を歩いていた。秋の季節ともなると、海に立ち寄る観光客はめっきりいなくなる。おかげで、老婆は静かな時間を過ごせていた。
「あの頃はよかったね・・・」
 老婆は足を止め、若かりし頃、青春の時代に思いを馳せた。
 今は支えとなる杖を持って歩かなければならないほどに、足が覚束ない。それに比べ若い頃は、まるで、一匹の蝶のようであるかのように優雅に走り回れたものだ。
「本当に歳はとりたくないわ」
 若い頃とは違う体調の変化に、老婆は落胆の色を浮かべずにはいられなかった。
「あれは・・・」
 老婆が目をやると、砂浜に古い壺が打ち上げられていた。壺には封がされており、波に流されたぐらいでは中身が外に出ないようになっている。
 老婆は、その壺に駆け寄ると、それを拾い上げた。見窄らしく、とても価値ある品に見えなかったが、老婆には、その壺はとても素晴らしいモノに見えた。老婆は躊躇(ためら)うことなく封を開けた。

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