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さよならは金木犀~side boy~

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さよならは金木犀~side boy~

「アユミ、俺...女子生徒にキスした」



「...へっ?」





数時間前に、アユミと婚姻届けを提出したばかりだと言うのに懺悔した。


彼女はピクリと眉を動かしただけで、表情をまったく変えなかった。けれど、繋いでいた手をそっと離した。



「何で話の今それを言うの」


「ごめん」





空はもう暗闇を纏っているというのに、俺たちのいるここは幻想的なイルミネーションと楽しげな人達でごったがえしている。


「...【憧れ】じゃなくて【恋】なんだと。」




いつも準備室で話をした女子生徒は最後に泣きながら俺に言ったんだ。


その姿は、まるで昔の自分を見ているみたいで胸が痛んだ。



窓から香る金木犀が胸の奥に閉じ込めた記憶を掘り起こして、自分があの頃に戻ったかのような錯覚に陥って、何度あの花の香りを消そうとしただろう。




先生...あんたはあの花が好きだったよな?


思春期の多感なお年頃だから。


反抗的な態度も全てそんな理由なんだと、仕事中心の両親はその一言で済ませて子供の俺には無関心だった。



一応、学校には行っても教室には行かずに屋上や人気のない校舎で1人、スマホをいじって時間を潰す。



あの日、たまたま鍵の開いていた国語科準備室に入り込んだとき...あの女に出会った。


「...今は授業中じゃないの?」



「あ~...昼寝でもしようかと」



「まだ2時間目だよ?」



「...帰る」



「そこで休んだらちゃんと教室に戻ること。わかった?」




大概の教師はこんな俺を怒るのに、あの女だけは怒ることもせず俺を部屋に招き入れて笑った。



「私、1年の国語担当してるの。君は...3年生ね?」



冷蔵庫からご丁寧にリンゴジュースまで手渡してニコニコするこの教師。こんな人学校にいたなんて知らなかった。


「3年生だったら受験もあるんだから、ちゃんと授業受けなきゃダメだよ?」


休めと俺に言いながらもずーっと話しかけてくるし。


「うるさいから眠れないんだけど」


「あら、誰も寝ていいなんて言ってないもん」


「はぁ?」


「そこで休憩していいって言っただけよ?私今時間が空いてるんだもん。話し相手くらいしなさいよ」

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