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Act.1 拗らせた初恋のヒミツ

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Act.1 拗らせた初恋のヒミツ

 
青白い月が眠らない街を朧げに照らしている。

天を突くようなビルに阻まれた月はネオンの眩しさに負け、散らばっているはずの星たちは明るみの中で霞んでしまっている。

あたしは千鳥足で人混みの中を進み、ほろ酔い気分でバッグの中からケータイを取り出した。

ディスプレイを見つめる視点は定まらないが、でも繋がりたい相手はこの親指が覚えている。



「出るかしら」



常に履歴の一番上を陣取っている相手。

終電を逃した日はいつだってコイツを呼び出す。

あたしのおぼつかない親指はリダイヤルを探し、喧騒の中に無機質なコール音を響かせた。


速くなる鼓動にはいつも気づかないふりをする。



≪――…はい?≫



そして6回目のコール音が鳴り終わったあと、耳にあてたケータイから不機嫌な声が聞こえてきた。

相手がどんな顔をしているのか想像出来て可笑しくなったあたしは「もしもーし!」と、わざとおちゃらけた声で答える。


 
≪…涼華ですか?≫

「そうでーす」



声の温度を下げたのが雰囲気で分かる。

それでも低くなったトーンに臆するわけでもなく(酔っていたのもあるけど)ハイテンションのまま「迎えにきて」と一言告げた。


梓に電話をかけるとき。

緊張して、胸が詰まって、心臓がバクバクいって、ケータイを握り締める手が震えてしまうのは誰にも言えないヒミツだ。



≪酔ってますね≫

「酔ってまふ」

≪今日はいかほど?≫

「テキーラショット10杯」

≪それだけですか?≫

「あとはワインとカクテルをテキトーに少々…」

≪はぁー…≫



バカですか…と、容赦ない声。そのすぐあとに≪そこで大人しくしてて下さい≫と聞こえて電話は切れた。

単調な声には"迷惑"の二文字がありありと滲んでいて、あたしはツキンと痛んだ胸の代わりにケラケラと甲高い声で笑った。


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