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薄く目を閉じて、私は目蓋の裏で、ある光景を静観している。
「ねぇ、コワイミチを通っていこうよ」
幼い私は、従姉妹の手を引いて行く。従姉妹もまたそれに従い二人で神社の境内を歩いた。
昼下がりの神社、天気はやや晴れていて、風が髪を絶えずほぐした。
「ここがこわいの?全然こわくないじゃない」
鳥居を抜けてすぐの、木々草花で覆われた石畳の道を早足で歩く。
従姉妹は、私の横で辺りを見回しながら反論した。
「今はこわくなかったね」
私はつぶやく。
「もう、じゃあいつもの道路を通った方が早かったじゃない」
「ここはね、本当はものすごくこわいんだよ。おじいちゃんのシンセキが言ってたもん」
「シンセキって?」
「だいきさん」
「あのおじさんはね、おじいちゃんのお兄さんの息子さんよ。シンセキってただ言われても困るわ」
「ごめん」
「あーあ、もう、遠回りしたからよけいに暑いじゃない。早くお店でジュースを買おう」
今度は従姉妹が前に出て、私の手をぐいぐい引っ張った。
石畳の一本道は、大きな道路に出る手前で少しカーブしている。
カーブを曲がる直前、もう一度私は来た道を振り返った。
でも、ここはコワイミチなんだよ。
日が少しの間雲に隠れ、辺りがうっすら暗くなる。絶えることのない風の音が、葉のこすれる音が、日の光に代わり身体を覆った。
風が入口から出口まで吹き抜けることのない道。
春には花を咲かせる桜の木がその全貌を包み込む道。
ふと、振り返った先に、黒くて大きい何かがうずくまってじっとこっちを見つめているような気がしたあの感覚。
ほら、こわい。
幼い私は踵を返して、足早にカーブを曲がった。

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