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第1話

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第1話

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 クルトンは体高180センチメートルのガナーシュを敵の視界から外した。
 市街戦ーーと言っても、立ち並ぶ家屋の高さは平屋が殆どで、2階以上ある建物は数えるほどしかない。しかも、標的である一際高く聳え立つ敵の拠点塔の周囲は広場になっていて、身を隠す遮蔽物が無い。近づけば近づくほど、その身を銃火に晒すこととなる、のだがーー
 ガナーシュに施された迷彩塗装が、周囲と体表面との色彩の差異を補正し、静かに景色の中に溶け込んだ。これですぐには発見されないだろう。
 一息つく。
 クルトンはガナーシュの中で息を潜ませた。アイドリング状態のガナーシュからは、駆動音は、しない。
 クルトンはガナーシュの負担を減らすためにエアコンを切った。途端に暑さが襲い来て、その息苦しさに思わず舌を出す。この我慢が勝ちを呼ぶと信じたい。
 ーーダメだ。やっぱ暑い。
 クルトンは通風口(ベンチ)を開け、大きく息を吸い込んだ。鼻腔を新築の木材の香りが擽る。
 ここーーキキクリ星の大気の成分は地球とさほど変わらない。ついでに言えば、自転周期や重力も。
 地球と似た星を植民地候補として探したのだから当然と言えば当然なのだが……。

 クルトンは自チームーーエクレールーーに現状を報告した。
〈こちらクルトン。配置完了。どうぞ〉
 実際に声に出したわけではない。所謂、口パクだ。ガナーシュがクルトンの口の動きを正確に読み取って、仲間達のガナーシュへと、クルトンの音声を送信した。
〈了解! こちらパンナコッタ。視覚でも確認済み〉
 パンナコッタと名乗った女が、クルトンのガナーシュが視ている映像を、自分のガナーシュを通して見た。残り全員の視覚情報も確認する。
 手練れのチームなら、このお互いの視覚情報の共有だけで、会話は要らない。が、クルトン達のチームはまだそのレベルには達していない。むしろ会話を楽しんでいるフシがある。
〈コッチもオッケーニャんッ。ターゲットインサイトーーーォ!〉
 女スナイパーのティラミスだ。スコープ越しに敵の頭部が見える。
〈いつでも行けるぜーッ! サッサと始めよーぜ!〉
 ヘビーガナーのガトーが吼えた。

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