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日常

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日常

 夕暮れ時、車一台がすれ違えるぐらいの道幅。その脇には

スマートな電柱がモデルのようにポーズを取って整列している。

そんなモデルを見守るようにスポットライトを当てる夕日。

いつもと変わらぬ風景は目から入り心地よい風を体全体に染み渡らせる。

熱くもなく、寒くもなく、双子の乗ったシーソーがどちらにも傾かないように

絶妙なバランスが心の中を満たしてくれる。それが心地いい。

 モデルの足元を外套のように夕日をまとった女の子。

頭にキャップ帽のシルエット。手に持ったスーパーの袋をグルグル回し走ってくる。

パンツはクシャクシャなボーイフレンドジーンズに白のスニーカー。

息切れがの声が聞こえてくる。

「はぁ、はぁ。」

「やっとついたよ」

そこは、近くの駅から20分程の住宅街に立つ二階建てのアパート。

手すりは赤茶け、所々穴というよりも、切断しかかっている抜け殻のような手すり。

長年の風雨にさらされアコーディオンカーテンのように板がめくれ上がった

ベニヤ製のドア。

その横には2層式の洗濯機。排水ホースはカビのパラダイス。

お世辞にも住みたいとは言えない。。。階段をトンッ、トンッとリズムよく駆け上がり、最後は

トンッ、ト~ン、ドンと一段抜かしするのがいつものリズム。

ドアに鍵を差し込み回すとポンッとロックが飛び出る。

ドアを開けるとギィ~とドアが悲鳴をあげる。

「ばぁば、ただいま~。柏餅買ってきたよ。大量に売れ残ってたから、
 半額だよ。超~安いでしょ」

「昨日が5月5日で端午の節句だったから安かったんだねぇ」

「端午の節句て何?」

「男の子の成長を祝う風習さ。女の子のあかりには関係ないさ」

「ふ~ん。とにかく食べようよ。あんこ好きでしょ。はいっ半分」

受け取ったかしわ餅をテーブル代わりのコタツの上に置くと

手を畳について、曲がった腰をヨイショと持ち上げ、ゆっくり流しへ。

「今、お茶を入れるからねぇ」

カチッ、コンロから勢いよく炎が吹き出す。

「ありがとう。やっぱ気が利くね。だからばぁば好き」

「わたしゃね、人生の半分はあかりの為にあるって思ってんだよ」

「はい、はい、ばぁばのいつもの口癖ね。」

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