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1.離陸

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1.離陸

 その日は快晴だった。時折飛行機が横切る青空を窓越しに見上げ、内海慶介は小さくため息をついた。

 あの日飛ばしたランタンは、今日のような空に吸い込まれていった。どうしてあの時自分は青を選んだのだろう。そんな些細なことが5年が経った今でも心に重くのしかかっている。

「慶介、行くぞ」

 聞き慣れた声に振り返ると、ブラックのギターケースを左手に提げた宮永純也が立っていた。

「もう皆待ってる。お前はいつもマイペースすぎんだよ」
「疲れた」
「しょうがないだろ。俺だって同じだ。飛行機の中で寝て行けよ」

 違う。この疲れは純也のそれとは違う。過密スケジュールゆえの肉体的な疲れじゃない。なにかこう、脳が働きすぎて眠れなかった翌朝の、一種の高揚感にも似た感覚。そして高揚感の中に渦巻く小さな絶望感。こんな状態は初めてだ。

 慶介は意識を疲れから引き剥がし、純也に向けた。

「お前こそギターわざわざ持って乗らなくても」
「命の次に大事なものだぞ。自分で持ってないと不安だろうが」
「心配性」
「今更それ言うか?」

 ラウンジを出ると、航空会社の制服を着た案内係の女性に親しげに話しかける宮永裕樹と、その横でスマートフォンをいじる吉岡亮の姿があった。

「兄貴のやつ、またか」

 裕樹の相変わらずの姿に、純也は呆れたとばかりに眉根を寄せる。とても兄弟とは思えない正反対のふたりを見比べて、慶介は口角を僅かに持ち上げる。

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