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朝顔

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朝顔

屋上に続くドアを開けると、三人の男がこっちを向いて座って煙草をふかしていた。煙は空高く登っていった。まだ三人のうち誰一人として煙草を吸っていい年齢には達していない。しかし、副流煙を気にして屋上で吸っているあたりは賞賛に値すると思う。

この空に放たれた煙が集まって今空に浮かんでいるような上空高く積み上げられた積乱雲を生み出している。

淀んだ煙草の煙に毎日包まれているにも関わらず、神崎の金色に染められた髪は相も変わらぬ宝石のような輝きを感じさせた。

そして彼はそれを知っていた。

彼の姿、表情、振る舞い、そのどれもが、何者にも屈しないたっぷりの自信を思わせる。

「おい、焼きそばパン買って来いよ」

神崎はそう言って煙草を一旦口に咥えてから、ポッケに手をつっこんで僕の右の手の平に百円玉を落とした。

「あれ、焼きそばパンは百二十円だよ」

「いいから早く買って来い。三分以内に買って来れなかったらお前の奢りな」

「え、ちょっとまっ……」

「よーいどん!」

僕は偏差値の低さが災いして神崎たちから色んな仕打ちを受けていた。とはいえ、神崎以外の人たちはその姿を眺めているだけで、僕に何かをしたり、何かをさせたりといった直接的な関係はないと言えばなかった。神崎が全てを主導していた。

彼のその王様っぷりは野蛮な男子の世界に留まらなかった。

僕が服を全部脱いでお腹にカエルの絵を描いて神崎の隣に連れたところで、行き交う女子たちはそんな奇行にはいささかの違和感も感じず、ただ彼の端整な顔立ちに釘付けになることだろう。それは僕が原因かもしれないが。

入学式の次の日から当然のごとく存在する神崎ファンクラブは、この学校だけにはとどまらず、近隣のほとんどの高校に支部のようなものが出来ている。

神崎はその分野においては辺り一帯の皇帝として君臨していた。SNSではちょっとした有名人らしく、彼を知っている人は少なくとも全国に五万人はいるそうだ。

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