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1.異世界転生トレンドあれやそれ

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1.異世界転生トレンドあれやそれ

 何周目ですか?
 最近の異世界転生では、このような挨拶を交わすのが常になっているらしい。
 中世ヨーロッパ風……これもほとんどの場合、どちらかと言うと近世のイメージだと思うけれど、だった街並みや文明レベルは、現代日本と同等か、それを凌駕する未来レベルまで魔改造が施され、内政チートにパイは残っていない。
 料理なんかの文化にしてもそうだ。出汁や旨味といった日本人独特の繊細な味覚が隅々まで行き渡り、下手な煮物などを出そうものなら、鼻で笑われる始末である。
 ポテチであるとか揚げ物であるとかのジャンクフードも、軒並み普及してしまった。食生活の現代日本化が、問題視されているくらいなのだとか。

 内政やグルメでの無双が駄目なら、正攻法の冒険ではどうか。駄目である。それはもう輪をかけて駄目駄目である。
 数々の神様やら女神様やら、人ならざる諸々の皆さんは、あらかた能力を絞り取られたか、懐柔された後で、挑む意味も付け入る隙もありはしない。
 かと言って、世界の中枢を担うデリケートな存在をスルーして、平原や森へ分け入ったとしても、勝ちの目は薄い。
 ゴブリン、スライム、蜘蛛などあらゆる可能性が転生者によって潰され、並のチートや魔力量程度では、何もさせてもらえないオーバーキルゾーンが広がっているだけなのだから。
 また、世界に散らばるレアアイテムは一部の先輩諸氏が独占している。
 運が良くて、すっからかんで帰還。悪かった時の事など想像したくもない有様である。

 そんな先輩諸氏がどうしているかと言えば、最近では魔王やら伝説の怪物やらの討伐もしくは懐柔に飽きてしまったらしく、思い思いの暮らしを営んでいると言う。
 そこらのモブさんかと思って声をかけたら、懐からオーパーツ、手にした鎌も鍬も激レア、作物は神々の祝福を受けた何とかだった、などという事が往々にしてある訳だ。
 それでも、先輩諸氏のほとんどがまったりライフに興じてくれているのであれば、転生転移をやる意味もあった。しかし、そんな平和的な転生者はごく一部で、モンスター転生者は後を絶たない。
 彼らは一つの世界であらゆるチートの限りを尽くし、欲しいものを全て手に入れ、持てる技術の粋を披露し切ると、次の世界へと旅立っていく。
 これが冒頭の、何周目ですか? である。
 そこで戸惑ったり、聞き返そうものならもうアウト。転生初心者であるとわかってしまえば、未来は無い。
 中には、師匠気質であれこれ指南してくれる者もいるにはいるが、ほとんどの場合は大層なトラウマを頂く形になる。
 いまや異世界は、一部の転移転生者によるセカンドライフ……いや、サードライフやエターナルなライフの温床となってしまったのだ。
 フロンティアは死んでしまった。星は隠れ、太陽は黒く染まり、月は不吉の赤を宿した。希望は海の底深くに封じられたのだ。
 残された道は二つだけ。隙間を探し当てるか、秘密裏に力を蓄えるかである。どちらにしても、日の目を見られる可能性は限りなく低いと言わざるを得ない。

「そんなのは嫌なんだ。だから誰も転生転移した事が無くて、誰も転生転移してこない、僕だけのチートワールドに転生させてくれ!」

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