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ホテル街を抜けて路地裏へと入り、男は身を縮こまらせた。
落ち着こうと胸を擦るも、動揺している男の心臓はドクドクと脈打つ。
路地裏の隙間から見えるのは、夜明けを知らせる瑠璃色の空だった。

「……何やってんだ俺は」

顔を両手で覆い項垂れた男の名前は、橘一瑠(たちばないちる)

振り返れば、28年間平凡な人生を歩んできたと思っている。
顔も騒がれるほどのイケメンでもなければ、救いようのない不細工でもない。
言うなれば、中。
真ん中レベルの顔立ちだ。

優しい両親に育てられ、良い友人にも恵まれ、大学卒業後は人材アセスメントの会社に就職した。
今も同じ会社で働いている。
順風満帆な人生を歩んできた。
可もなく不可もない人生。
そんな人生にもう少し刺激が欲しいと思ったこともあったが、結局平凡が一番だと実感した。

たった今、橘は平凡とはかけ離れた出来事に対面してしまったのだ。

頭をガンガンと殴られる二日酔い特有の頭痛に襲われ、橘は思わずこめかみを押さえる。
混沌とする記憶の中、間違いであってほしいと願うばかりだった。

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