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「………………!」

視界全体を覆うように広がっていた闇夜の森が、一瞬で見慣れない巨大な岩場に変貌した。

霧の中を走るトラックの車内で何度も経験した、異世界への“壁”を通過したときに感じる、あの耳が遠くなるような感覚が沙羅を襲った。

シュウジンの言っていた“見えない境界”というものが何処かにあったらしい。

周囲の景色が一変し、いきなり頭上に現れた太陽が沙羅の眼球を痛めつけた。

がっちり腕を掴んで離さない“ひっぱり女”は見えない壁の存在を知っていたのだろうか。動揺の色を全く見せずに、変わらないスピードで沙羅を後ろに引き摺り続ける。

だが広い岩場に出たことで、森の中では木の枝に邪魔されてまともに振り向くことすら難しかった沙羅も、ようやく眩しいほどの陽光の下、女の顔をはっきり確かめることが出来た。

思ったより若い。同じくらいの年頃だろうか?

明るい場所で見る謎の“ひっぱり女”は、肩越しに厳しく睨みつけても無表情で怖じる気配を見せなかったが、意外に小柄で、まともに当たって勝てない相手でもなさそうに見えた。

「沙羅!」

引き摺られてきた岩場の後方で、空中が不自然に屈折して銀色オオカミの背中に乗ったルナが飛び出して来て叫んだ。

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