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 仏壇に供える花といえば菊や樒がメインだが、お盆にはそれに加えてほおずきを活けたり、鉢植えを飾ったりする。先祖が無事に帰り付くよう、彼らを導く提灯に見立てているのだそうだ。花屋さんで買ってくることが多いが、わりと田舎のここいらでは自分で育てているひともいる。
 その日も部活の帰り、川にそって広がる畑で植わっているのを見つけた。鮮やかに色づく大きな実が、鈴なりになった立派なものだ。しかし、
 「あ、待って」
 歩道から覗き込もうとしたところ、いっしょにいた友人に止められた。
 「それはダメ。見るなら別の場所のにしなよ」
 妙にはっきり言い切り、自分の腕を引いてずんずん歩いていく。10メートルほど行き過ぎてから、無言で後ろを示されて振り返った。
 ――迫ってくる夕闇の中、ほおずきのそばに人がいた。ぼんやりとした灰色の服で、こっちに背を向けてうずくまっている。
 さっきまで誰もいなかったのに? というか色合いのせいか、輪郭までボケてる気がするんだけど。まだそんなに暗くないよね?
 「ここさ、川がカーブしてるでしょ? そういう場所って、河上から流れてきたものが浅瀬になってる内側にたまりやすいんだ。 砂とか泥とか、ときどき人とか」
 さらっと言われた単語に、一瞬息が止まった。ひとって?
 「川に落ちて流れついて、そのまま離れられなくなったんだろうね。毎年今くらいの時期になると、ああやって畑のほおずきのとこでじっとしてるのを見かけるよ」
 友人がさっき止めたのは、邪魔をしないようにという優しさなのか。それともうずくまっているひとを、自分が連れて帰らないようにという配慮なのか。
 「……もう帰るところ、ないんだろうなぁ」
 きいてみたいのは山々だったのだけど、つぶやいた彼女の顔がやけに寂しそうで。
 うまく声を掛けられなくて、結局、夕焼けの空に気を取られたフリをすることにした。

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