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死の胎動は木霊する

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死の胎動は木霊する

 ツイッターには『bot』と呼ばれるアカウントが存在する。それはプログラムによって自動にツイートをしたり、誰かに話しかけられればランダムで用意されていた言葉を返す。そういう機能を実装したアカウントのことだ。

 そんなアカウントのひとつに「くだんbot」というbotがある。アイコンは人面牛。キモカワにカテゴライズされるポップなイラストが設定。これが今、中学生の間で人気なのだ。その人気の秘訣は、返信内容である占いがよく当たるからだ。

 例えば「明日はどんな日」と話しかけると「抜き打ち試験がある」「雨に振られる」「彼氏の浮気が発覚」のように、淡々とした返答がある。とても的確なので、面白がって使う中学生が多かった。

 しかし、このくだんbotを巡る事件がひとつ起きてしまったのをご存知だろうか。それは巷で『死を呼ぶ「くだん」bot』と呼ばれている。

 その日は、とある中学校の修学旅行の前日だった。ワクワクと期待に胸を膨らませている子供たち。ひとりが何気なく、くだんbotに「明日はどんな日」と聞いた。すると、「死ぬ」と返ってきた。今まで、こんな物騒な返信はなかった。バグかと思ったがクラスメイトの誰が話しかけても「死ぬ」としか返ってこなかった。

 見る見る青ざめていく子供たち。何か嫌な予感がする。楽しいはずの修学旅行が、死刑執行日のように感じられていた。だが、言いようのない不安を解消する方法はなく、皆とぼとぼと下校した。

 その日の夜、最初に「死ぬ」と言い渡された少女・あゆみのツイッターのDM欄に通知がひとつ合った。くだんbotからだった。一文目には「助かる方法があります」と書かれていた。もちろん、こんな仕様があるのは知らない。初めてのことである。

 恐る恐るあゆみがDMの内容を開いてみると、最初の「助かる方法があります」の一文のあとに、「明日、担任の先生を殴りなさい」とだけ書かれていた。意味がわからなかった。先生が全員を殺すとでもいうのだろうか。まったく理解ができない。

 担任の木吉正孝教諭は、子供たちに比較的ではあるが好意的な印象を持たれる人物。数学という難しい分野でありながら、わかりやすく楽しい授業をしてくれる先生である。しかし、あの先生を殴らなければ自分は死んでしまうのだろうか。

 ピコンとラインが鳴った。同級生の紗希からだった。LINEにはツイッターのスクリーンショットが送られていた。よく見ると、くだんbotからのDMである。自分に送られてきた内容と同じものがそこにあった。

「もしかして、みんな同じ内容のDMが送られてきてるのかな」

 あゆみはクラスのグループLINEチャットに「くだんbotからDM来た子いる?」と送ってみた。すると、チャット欄はくだんbotのスクリーンショットで埋まっていった。全員に送られていたのだ。

 誰かがLINEチャットで「やるしかないよね」と発言した。みんな、「OK」「やったね」と同意のスタンプ爆撃。

「殴らなきゃ死んじゃうんだもん。しかたない、しかたないよ」

あゆみは自分に言い聞かせるようにグループLINEにチャットした。また、みんなから同意のスタンプが爆撃のように流れてきた。心は決まる。

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