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はじまり

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はじまり

高校を卒業をして数週間が経った頃、私は半ば家出同然に実家を出て一人暮らしを始めた。

前々から一人暮らしをしようと決めていたものの、引越しの資金を親に出してもらうのも借りるのも嫌だった私はコツコツ貯めた貯金で暫くはやっていけそうな部屋をひと月以上かけて探した。

けれど、立地条件の良い場所にあるアパートやマンションなんて到底無理。
多少不便でもせめて、築年数の新しい所でと思ったりもしたけど、それでもなかなか良い物件に巡り会えなかった。

だけど、私にはモタモタしてはいられない理由があった。
とにかく一日でも早く実家を出たい。
そんな思いから、ダメもとで不動産屋に『とにかく安くて、住みやすい物件はないか』と尋ねてみた。
すると、

「あるにはあるんですけど……」

そう言い淀みながら、候補であろう物件が写っている資料を見せてくれた。

「これ、ですか?」

見た瞬間、これはないだろうと思った。

資料には『築四十年、簡易キッチン付き六畳一間、風呂無しトイレ共同のアパート』と書かれていたのだから。

しかも、一階二階共に五部屋ずつの計十部屋あるにも関わらず、住人は一階ニ部屋、ニ階一部屋の三部屋しか埋まっていない。

有り得ないとは思ったけれど、一応、直接部屋を見てみようと不動産屋と一緒に見に行ってみた。

外観も部屋の中もやはりイメージ通りのボロ……いや、古い創りだった。

しかし、一つだけ良い点があった。
――それは立地条件は良い事だ。
駅から徒歩十分、大型スーパーやコンビニも徒歩圏内にある。

(立地条件は本当、これ以上ないくらいに良いけど……)

とはいえ、どんなに立地条件が良くても、どんなにお金に余裕がなくてもこれは無理だ。
今どきの女子大生が住む部屋ではないと断ろうとした矢先、

「この物件はその、見ての通りだいぶ古いですし、昔ながらの創りという事もありまして、敷金礼金は無しで、家賃はひと月一万五千円です」

その言葉を耳にしてしまった私は

「家賃一万五千円!?住む!住みます!」

立地条件が良い事、敷金礼金無しという魅力、そして、何よりも家賃の安さが決め手となり、つい、住む事を決めてしまったのだった。

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